地上アナログ放送とBSアナログ放送が終了する予定の2011年7月24日まで,いよいよ3年を切った。今月24日からは,NHKと民放事業者の地上アナログ放送の画面に「アナログ」という文字が表示されはじめた。いち早くデジタル放送を開始したスカパーJSATホールディングス傘下のスカイパーフェクト・コミュニケーションズは,東経110度CS放送「e2 by スカパー!」に続き,東経124・128度CS放送「スカイパーフェクTV!」でもHDTV(ハイビジョン)放送を行う準備を進めている。今回は,こうしたスカパーJSATグループのHDTV戦略について考えてみる。

 スカイパーフェクTV!の本放送が始まって,今年で12年になる。サービス開始当初は100チャンネル程度だったが,今では200チャンネル規模のサービスに育っている。


スカパーJSATグループは衛星放送業界の再編モデル

 さらに,プラットフォーム事業者であるスカイパーフェクトと衛星を運用するJSATを,持ち株会社であるスカパーJSATの下で統合し,JSATのライバルだった宇宙通信(SCC)も傘下に収めた。2008年10月には,スカイパーフェクトとJSAT,SCCの3社を合併して一つの事業会社にする。こうしたスカパーJSATグループの再編の様子は,わが国の衛星放送業界の再編モデルといえるものだ。

 BSデジタル放送における通販番組の多さが社会問題化しつつあるなか,総務省はBSデジタル放送と東経110度CS放送「e2 by スカパー!」を2011年以降に「東経110度衛星放送」として統合し,普及政策を一体化する方針を打ち出した。具体的には,東経110度衛星放送の新たなチャンネルとして,無料の広告放送よりも有料放送を優先する。また,水平方向の画素数として,フルHD規格の「1920」だけでなく,「1440」も認めるという。

 画素数については日本民間放送連盟などが,「1920を中心にすべき」と主張している。しかし,世帯普及率や通販番組などの比率の高さを考えるとBSデジタル放送はまだ,「準基幹放送」とは言い難い面があることも否定できない。視聴者の利便性という観点からみると最高画質よりも,一定の品質で多様な選択肢が持てる内容の充実した有料チャンネルの方が支持されるのではなかろうか。

 総務省の方針を受けてスカパーJSATグループが,e2 by スカパー!の既存チャンネルのHDTV化を進め,BSデジタル放送における民放キー局系の無料チャンネルとの相乗効果を狙いたいのは当然の帰結であろう。また,2011年以降の完全デジタル放送時代において一定の存在感を維持するため,スカイパーフェクTV!のリニューアルも避けて通れない課題になったといえる。