◆今回の注目NEWS◆

平成20年「情報通信に関する現状報告」(情報通信白書)の公表(総務省、7月11日)

【ニュースの概要】総務省は7月11日、「活力あるユビキタスネット社会の実現」を特集テーマとした「平成20年版 情報通信白書」を公表した。


◆このNEWSのツボ◆

 今回は、以前にもこのコラムで取り上げたことのある情報通信白書の話である。これも何度か書いた気がするが、政府の白書類というのは、実は、日本の経済や企業の実態を調べ、分析する上では秀逸の情報源である。調査の網羅性、データの中立性といった面で、やはり民間の報告書類と比べると一日の長がある。

 情報通信分野では、民間でも「インターネット白書」という優れたレポートがあり、情報通信分野に関する実態情報という意味では、日本は世界的に見ても充実していると言えるだろう。

 さて、今年の情報通信白書であるが、若干、総務省のPRめいたところもあるが、いくつか興味深い結果が記されている。それは、第1章第1節「情報通信により地域経済の活性化」の部分である。そこには、「ICT総合活用指標」という新しい概念が紹介されている。そして、

  1. 550点満点の指標で最高値は430点と高いが、平均値は80点強と低く、多くの自治体がICTを十分活用できていない。
  2. 一般的には、規模の大きな自治体ほどICTの活用が進んでいる。
  3. 離島を含む地域では、すべての分野でICTの活用が進んでおり、また、過疎・高齢化・豪雪市町村では、保健・医療や住民交流、交通・観光分野でのICT活用が進んでいる。
といった状況が指摘されている。

 このうちの1番目と2番目は、言ってみれば常識的な結論であるが、3番目の事象は、やや予想外という印象である。過疎や豪雪、高齢化に悩む自治体は、一般的な感覚では、「ICT活用に遅れ」と思われがちである。しかし、過疎や高齢化が、一定限度以上に進むと、ICTを利用することなしには、地方での生活・生産活動自体が難しくなっている……ということなのかもしれない。

 現在の日本の状況を見ていると、高齢化は止めようのない現象であるし、おそらく都市と地方の格差の拡大というのも、なかなか抗し難い流れである。だとすれば、今回の調査結果は、「ICTの活用によって、多少なりとも地方の活性化が図れ、都市地域との格差是正に貢献できる」という可能性を示しているのではないか?

安延氏写真

安延申(やすのべ・しん)

通商産業省(現 経済産業省)に勤務後、コンサルティング会社ヤス・クリエイトを興す。現在はフューチャーアーキテクト社長/COO、スタンフォード日本センター理事など、政策支援から経営やIT戦略のコンサルティングまで幅広い領域で活動する。