前回は,LANスイッチ向けの冗長化プロトコル「GSRP」の概要をVRRPと比較しながら見てきました。今回は,さまざまな工夫を取り入れたGSRPの動作を詳しく見ていきましょう。
マスターとバックアップはケーブルで直結する
GSRPでは,対応のLANスイッチ2台をペアにして「GSRPグループ」を構成し,片側をマスター装置,もう一方をバックアップ装置として稼働させます。図3のマスター装置Aはデータ・パケットを転送し,バックアップ装置Bはデータ・パケットをブロッキングします(図3)。
このとき,マスター装置とバックアップ装置の間は,LANケーブルで直接つなぎます。このGSRPスイッチ間の回線を「ダイレクト・リンク」と呼びます。
ダイレクト・リンク上では,双方の装置間で「GSRP Advertiseパケット」と呼ぶ状態確認用の制御パケットをやりとりします。対向装置の状態識別は,以下のような条件で判断します。
- ケースA:マスターとバックアップ装置のダイレクト・リンクの回線がリンク・アップし,GSRP Advertiseパケットの送受信できている状態 = 双方の装置は正常に動作している
- ケースB-1:バックアップ装置でGSRP Advertiseパケットを受信できない場合で,ダイレクト・リンクの回線がリンク・アップしている状態 = マスター装置の装置障害ではなく輻輳(ふくそう)が起こっている
- ケースB-2:バックアップ装置でGSRP Advertiseパケットを受信できない場合で,ダイレクト・リンクの回線がリンク・ダウンしている状態 = マスター装置に障害が起こっている
このように,ダイレクト・リンクのリンク・アップ/ダウンとGSRP Advertiseパケットの到達を監視することで,対向装置の状態を識別することとしました。これを表にすると以下のようになります。
ただし,ダイレクト・リンクに使うLANケーブルが断線したような場合は,マスター装置の障害でなくても上記の「ケースB-2」となり,「マスター装置に障害が起こっている」と判断されてしまいます。そこで,ダイレクト・リンクの部分は,複数のLANケーブルで装置間を接続し,リンク・アグリゲーションを利用するようにします。こうすれば,マスター装置の障害時にはダイレクト・リンクを構成するすべてのLANケーブルのリンクがダウンするので,マスター装置の障害を高い確度で検知できるようになります。
こうした理由から,GSRPのダイレクト・リンクには,リンク・アグリゲーションを使用することを推奨しています。