連載最終回となる第4回では,大規模な企業ネットワークの集計結果を紹介したい。ここでいう大規模ネットワークとは,つながるパソコンの台数が1001台以上の企業ネットワークである。回答数は113件で全体(689件)の16%に当たる。拠点数の平均は211である。

 大規模ネットワークの集計結果からは,小・中規模ネットワークとは異なる傾向が示された。それでは大規模ネットワークの実像を,インターネット接続のアクセス回線から見ていこう。

WANサービスのトップは広域イーサネット

 大規模ネットワークで最も使われているインターネット接続のアクセス回線は専用線だった(図4-1)。それも全体の約6割を占め,FTTH(fiber to the home)やADSL(asymmetric digital subscriber line)の導入率を大きく上回っている。大規模ネットワークの企業ユーザーは,インターネットをいつでも確実に利用できるように,回線コストよりも信頼性を重視してアクセス回線を選択していることがわかる。

図4-1●インターネット接続のアクセス回線(複数回答)
図4-1●インターネット接続のアクセス回線(複数回答)
6割以上が専用線を利用している。

 WANサービスで導入率が高いのは広域イーサネットである(図4-2)。広域イーサネットの高速品目の料金は,他のWANサービスに比べて割安感があることから,大規模ネットワークの企業ユーザーの支持を集めたようだ。実際,自由回答欄では「拠点間を専用線とダイヤルアップで接続していたため,低速で高コストになっていた。広域イーサネットを採用することで,高速化と低コスト化を両立できた」という声が見られた。また,広域イーサネットはレイヤー3以上のプロトコルがフリーなサービスであることから,米IBMのSNA(systems network architecture)に代表されるベンダー独自プロトコルを採用している企業ユーザーが導入しているケースもある。

図4-2●WANサービス(複数回答)
図4-2●WANサービス(複数回答)
広域イーサネットが最も使われている。

内線IP電話とビデオ会議システムの導入率は約5割

 IP電話の導入率は,外線では約3割と小・中規模ネットワークとそれほど変わらないものの(図4-3),内線の導入率は約5割ある(図4-4)。これに伴い,通信品質を確保するためのQoS(quality of service)の適用率もLANで約3割,WANで約5割と高い。

図4-3●IP電話(外線)
図4-3●IP電話(外線)
導入している企業は全体の約3割。

図4-4●IP電話(内線)
図4-4●IP電話(内線)
導入している企業は全体のほぼ5割。

 多地点間のビデオ会議システムは導入率が約5割で最も多かった(図4-5)。小・中規模ネットワークでは「導入予定なし」がトップだったが,大規模ネットワークではようやく導入する企業の割合が上回った。

図4-5●ビデオ会議/動画配信システム(複数回答)
図4-5●ビデオ会議/動画配信システム(複数回答)
多地点間のビデオ会議システムは5割弱の企業が導入している。

データ・センターの利用が進む

 社外との通信用メール・サーバーの運営では,中規模ネットワークと同様に,「自社に設置」が最も高かった(図4-6)。中規模ネットワークと異なるのは,次に高い回答が「データ・センターに設置」だったことである。「事業者のサービスを利用」を上回った。メール・サーバーをデータ・センターに設置している企業の自由回答欄には「自然災害に対する備えとして,社内LAN内に設置してあったメール・サーバー,グループウエア・サーバ,データベース・サーバなどを社外のデータ・センターへ移設した」とあった。

図4-6●メール・サーバーの運用
図4-6●メール・サーバーの運用
自社に設置する企業が6割を占める。

 社外向けのWebサーバーの運用でも同様に,「自社に設置」がトップで次が「データ・センターに設置」だった(図4-7)。データ・センター事業者はサービス料金の引き下げで新規獲得を狙う一方,バックボーン回線の増強などで既存顧客の引止めにも余念がない。こうしたサービス競争の恩恵が大規模ネットワークの企業ユーザーにはあるようだ。

図4-7●Webサーバーの運用
図4-7●Webサーバーの運用
自社に設置する企業が5割を占める。