【問題】
 あなたの企業では,ユーザーが社外にいるときもファイル・サーバー上のファイルを使用して作業できるようにする必要がある。しかし,ファイルをローカルにコピーすることは,ローカル・ファイルとサーバー上のファイルの同期をユーザー自身が行う必要があるため,避けたいと考えている。

どのようにしたらよいか。適切なものを選択しなさい。

1. ファイル・サーバーの共有フォルダを保持しているパーティションに,シャドウ・コピーを設定する
2. ファイル・サーバーの共有フォルダを保持しているパーティションに,ディスク・クォータを設定する
3. 共有フォルダにオフラインを許可し,ユーザー側で使用できるように設定する
4. 共有フォルダにグループ作業を許可し,ユーザー側で使用できるように設定する

正解:3
 共有フォルダに対し,オフライン・ファイル機能を使用すると,クライアント・コンピュータ上のキャッシュを使用して作業できるようになるため,ネットワークに接続していないときでも作業ができるようになる。例えばノートPCをオフィスから持ち出して客先で作業をするような場合でも,ファイル・サーバー上に保存されている見積書をその場で参照した上で,更新したりできる。よって正解は3である。

 ネットワークに接続していない場合にファイルが使用できるように,ローカルにファイルをコピーすると,ローカルのファイルとサーバー上のファイルを手動で上書きしてバージョンを管理する必要が出てくる。ユーザー自身が作業しなくてはならないため,バージョンの不整合が発生する可能性がある。オフライン・ファイル機能では,ローカルのキャッシュとサーバー上のファイルは,自動的に同期が取られるように構成できる。

 オフライン・ファイルを使用するには,サーバー上とクライアント上で設定をする。

●サーバー上:共有フォルダに対し,オフラインでの使用を許可する(図1

図1●サーバー上のオフライン・ファイルの設定
図1●サーバー上のオフライン・ファイルの設定
[画像のクリックで拡大表示]

 共有フォルダの既定の設定では,ユーザーが指定したファイルとプログラムのみ,オフラインでの使用が許可されている。

 共有からユーザーが開いたファイルとプログラムを,すべて自動的にオフラインで利用可能にすることもできるし,[パフォーマンスが最適になるようにする]のチェック・ボックスをオンにすると,すべてのプログラムが自動的にキャッシュされてローカルで実行される。

 ただし,クライアントのローカルにキャッシュされたファイルは,十分に保護されているとはいえない。そのためセキュリティを考慮すべきファイルは,オフラインで利用しないように設定できる。

 クライアント側のキャッシュは,クライアント側のNTFSのアクセス許可や,キャッシュの暗号化で保護できる。グループ・ポリシーを利用して,これらの設定を一元管理することも可能だ。

●クライアント上:オフライン・ファイルを有効にし(図2),共有フォルダに対して常にオフラインで使用できるようにする(図3

図2●
図2●クライアントでのオフライン・ファイルの設定(Windows Vista)
図3●
図3●クライアントでのオフライン・ファイルの設定(Windows Vista)

 Windows XPでは,オフライン・ファイルの構成は,エクスプローラから[フォルダオプション]で行っていた。Windows Vistaでは,[コントロールパネル]-[ネットワークとインターネット]-[オフライン ファイル]で行う。同期の確認は,同じくコントロールパネルの[同期センター]でできるようになっている。

 オフライン・ファイルで作業している際に,共有フォルダを参照した画面が図4である。オンライン時である図3と比較すると,オフライン・ファイルの設定を行った「Share」フォルダ以外が利用できなくなっていることが分かるだろう。

図4●
図4●オフライン・ファイルでの作業(Windows Vista)

 さらにWindows Vistaでは,自動的なオンライン/オフラインの切り替えのほか,キャッシュの暗号化の強化,同期の差分転送,キャッシュで使用するディスク領域の詳細な設定,ネットワークの低速リンクの検出によるオフライン・ファイルへの切り替えなどの機能が追加されている。

 オフライン・ファイルを使用する際に考慮すべきなのは,複数のユーザーが使用しているファイルの競合である。オフラインでのローカル・キャッシュを使用した作業と,オンラインでのサーバー上のファイルを使用した作業が同時に行われた場合,オフライン・ファイルが同期されると競合が発生する。それを解消するのはユーザー自身で,どちらの版を残すか,あるいは両方残すのかを選択できる。また,オフライン・ファイルがサーバー上から削除されると,ローカルのキャッシュも同期時に削除される。

 運用によっては,正しい情報で更新されないケースも出てくる。この問題を解決するには,サーバー上で共有フォルダのシャドウ・コピー機能を利用するとよい。

 シャドウ・コピーは,共有フォルダのスナップショットを保持し,ユーザー自身がファイルやフォルダを保存されたスナップショットの状態まで戻すことができるようにする機能である。従って,1は誤りである。

 ディスク・クォータは,サーバーのパーティションに対するユーザーの使用領域を追跡したり,制限したりする機能である。従って2は誤りである。

 共有フォルダにグループ作業という設定はない。従って4は誤りである。