Windows XPの継続利用のハードルがますます高くなる。パソコンメーカー各社はこの6月末でXP搭載モデルの販売を終了したのに続き、来年1月にはVistaからXPへの「ダウングレードサービス」も一斉に終えるもよう。マイクロソフトはVistaへの移行をやんわりと迫る。

 ダウングレードサービスとはVista搭載モデルのOSをパソコンメーカー自らがXPに入れ替えて顧客に納品するサービスのこと。メーカー各社はXPを収めたメディア(CD-ROMなど)を複製し、ダウングレード用としてパソコンに添付するのを認める契約をマイクロソフトと交わした上でサービスを提供している。1台当たりの料金はNEC、デル、レノボ・ジャパンは無償。日本ヒューレット・パッカードが2100円、富士通は4200円だった。

 来年1月以降、マイクロソフトはこの複製・添付許諾契約を認めない方針とみられる。すでに一部のメーカーには通達したようだ。複数のメーカー関係者が本誌に証言した。

 マイクロソフトは公式には契約の終了時期を明らかにしていない。パソコンメーカーとの個別契約であり内容は開示できないという。ただ同社の幹部は従前、「XPメディアの複製・添付は特別措置」とコメントしており、このスタンスを徹底した可能性が高い。

 仮に複製・添付許諾契約を打ち切られると、メーカーはダウングレードサ ービスを提供できなくなる。XP自身のサポートは6年後の2014年4月まで続くが、入手する手段は徐々にせばまる。XPをプリインストールしたパソコンの販売は6月末で終わった。

 そうなると来年1月以降、XPを新規導入したいユーザー企業は、Vistaに付属する「ダウングレード権」を活用するしかない。これはVista搭載モデルやVistaのボリュームライセンス(企業向けの一括購入形態)を購入した企業が、OSを旧版のWindowsに入れ替える権利。6月末には「事実上廃止」との報道もあったがこれは誤り。今後も権利は有効なので、ユーザー企業が新規購入したVista搭載モデルのOSをXPに入れ替えても構わない。

 ただしダウングレード権を行使するには、XPを格納したメディアをユーザー企業が自分で用意する必要があるので注意が必要だ。市販のXPのパッケージや、ボリュームライセンスに付属するXPのメディアを確保してあればよいが、そうした備えのない企業にとってはXP新規導入の手段を実質的に奪われかねない。

 XPへの入れ替えをユーザー企業自身が実施しなければならないのも面倒の種だろう。パソコンメーカーなどが代行サービスを実施するにしても、コスト増になる公算が大きい。

 XP継続利用の外堀は次第に埋められようとしている。

図●2008年7月以降のWindows XP提供形態 パソコンメーカーがダウングレード用メディアを添付するサービスは2009年1月で終了する見通しだ
図●2008年7月以降のWindows XP提供形態
パソコンメーカーがダウングレード用メディアを添付するサービスは2009年1月で終了する見通しだ
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