国内IPTVの仕様検討を進めてきたIPTVフォーラム(主査:安田靖彦東京大学名誉教授)は2008年6月,IPTV受信機用の技術仕様案を完成させた。今後は国内でIPTV受信機の共通化が進み,1台の受信機で様々なサービスが利用可能になる見込みだ。対応受信機は2008年末に登場する可能性がある。

 これまで個別に存在していた国内IPTV受信機の仕様が一つにまとまりそうだ。NTTやKDDI,テレビ局各社,ソニーや松下電器産業といったIPTVにかかわるキープレーヤーが参加するIPTVフォーラムは2008年6月,計2380ページに及ぶ技術仕様案を完成させた。これによって,今後は1台の受信機で様々なIPTVサービスを利用できるようになる見込みだ。

NTTグループは早速新仕様を支持

 これまで国内のIPTV仕様は,家電メーカーによるテレビ向け情報配信サービスである「アクトビラ」が採用する仕様(デジタルテレビ情報化研究会の仕様)や,NTTぷららの「ひかりTV」が採用する仕様(NTTやKDDIなどが中心に策定したIPSP仕様)など,個別に存在していた。

 IPTVフォーラムはこうした課題を解消するため,国内標準となるIPTV受信機の仕様策定に着手。代表的なIPTVサービスであるアクトビラとひかりTVの双方を取り込む形で仕様をまとめた(図1)。同フォーラムの運営委員長である慶應義塾大学の村井純教授は,「今後はテレビに標準的にIPTV機能が搭載され,IPTVの幅広い展開が見込める」と強調した。

図1●国内IPTV受信機が共通化へ
図1●国内IPTV受信機が共通化へ
IPTVフォーラムがIPTV受信機仕様のドラフト案をまとめた。アクトビラやひかりTVの仕様を取り込んだもので,国内IPTV受信機の事実上の標準になる。対応端末は年末ころに登場する見込みだ。

 NTTグループはいち早く同フォーラムの仕様に準拠する姿勢を見せる。NTTコミュニケーションズの有馬彰代表取締役副社長は「調整が必要になれば,現在展開中のひかりTVの仕様もIPTVフォーラムの仕様に合わせていく」とコメント。関係者によると,早ければ2008年末にも共通仕様に対応する受信機が登場する見込みだという。

将来のサービス拡張にも対応

 今回公開した技術仕様案は,7種の仕様書で構成する。サービスの基本的な形を記述した配信サービス仕様(VOD仕様,ダウンロード仕様,IP放送仕様),これら基本サービスをどのようなネットワークで展開するかなどを記したサービス・アプローチ仕様(放送連携仕様,インターネットスコープ仕様,CDNスコープ仕様),そしてこれらにIP再送信の運用規定を記した「IP再送信運用規定」を加え,全7種となる。

 例えばCDNスコープ仕様は,NGNなどの帯域保証型ネットワークを想定する。仕様を分けたのは,一部の仕様だけに対応した受信機を開発しやすくするためと,将来的な仕様拡張を見据えたためだという。

 IPTVフォーラムは,今回の技術仕様案公開をもって解散する。「技術仕様案に含まれる知的財産所有権や著作権などを処理する上で組織として限界が訪れている」(事務局)。今後は新団体を立ち上げ,技術仕様を維持するという。新団体が標準仕様を固めた上で,国際標準化団体への提案や,仕様に沿った機器の相互接続テストの実施などを検討していく。