住生活グループ傘下の住宅設備機器大手、INAX(愛知県常滑市)の坪井祐司・取締役上席執行役員は、たたき上げのCIO(最高情報責任者)だ。1979年のINAX入社以来、ほぼ情報システム部一筋。情報システム部長を経て、2007年から情報システム部と経理・財務部を管轄する経営管理統括部長を務めている。
今の立場に就いたのは、情報システム部で会計システムにかかわるなかで、「管理会計のやり方を根本的に変えたいという思いがあり、社内で提言していた」(坪井取締役)からだ。就任以来、「連結経営管理システム」の実現に向けたプロジェクトに取り組んでいる。日本国内だけで13ある工場や子会社で、調達、在庫、販売などの事務処理手順を標準化し、連結での在庫水準など管理会計上の指標を的確に把握できるようにするものだ。これを坪井取締役は「バーチャルファクトリー構想」と呼ぶ。「製造ラインが全国13カ所にあっても、生産管理部門や事務部門は1カ所にある状況にしたい」と話す。
部門横断の改革には抵抗が付き物だが、坪井取締役は「情報システム部は"人材供給部"として機能してきた。要所にシステムが分かる人がいるから大丈夫」と自信を示す。INAXでは、企画・スタッフ系の新入社員(毎年20人弱)は全員、最低3カ月間情報システム部に所属する。こうして巣立った約300人が社内各所にいる。この間、多数の先輩社員が指導に専念するため、負荷は小さくないが「人材育成には手間をかけるべき」との信念を持って取り組ませている。
「一番情報システム部で活躍している人を送り出す」という方針で、中堅社員も積極的に営業部門や工場などに送り出してきた。INAXでは、工場長など幹部社員の1割近くが情報システム部出身者だ。現場に供給してきた人材がこれから坪井取締役の構想を実現する上で生きてくるはずだ。
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