ここでふと気になることが出てきた。ビニール袋に入れただけの簡易包装で大丈夫なのかということだ。どうせ捨てるパソコンとはいえ,壊れ物。輸送するのに支障はないのだろうか。

 この理由は,次の過程で明らかになる。そのため,説明は後に譲って,今はロールパレットを見送ろう。ロールパレットはトラックに乗せられて,次の過程,物流会社の山九に運ばれていった(写真3)。

写真3 ロールパレットごとトラックに入れて山九へ
写真3 ロールパレットごとトラックに入れて山九へ
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 山九の倉庫に到着すると,ロールパレットはトラックから下ろされ,作業場へと運ばれる(写真4)。ここでの作業は,回収されたパソコンやディスプレイとエコゆうパック伝票の内容が合っているかの確認。具体的には,機器の種類やメーカー名は正しいか,リサイクルマークはあるかなどをチェックする。山九の作業員たちはこの作業を「とつごう」と呼んでいた。漢字で書くと「突合」。なんだか豪快な響きである。

写真4 山九に到着。トラックから降ろして作業現場へ運ぶ
写真4 山九に到着。トラックから降ろして作業現場へ運ぶ
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 言葉の響きとは裏腹に,突合は地道な作業だった。パソコンやディスプレイとエコゆうパック伝票の内容が合っているかを確認するには,箱やビニール袋からパソコンやディスプレイをいちいち出さなければならない。かなり面倒な作業だ。特に,CRTディスプレイやディスプレイ一体型のパソコンは大変。重くて,大きいので袋から出すだけでも一苦労である(写真5)。

写真5 一つずつ開封する。狭いスペースで,袋を破くだけでも大変そう
写真5 一つずつ開封する。狭いスペースで,袋を破くだけでも大変そう
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 「これは結構な重労働だ……」と思いながら作業を見ていると,はたと気が付いた。郵便局の集積所で疑問に思ったこと,つまり,PCリサイクルで回収されるパソコンが,箱やビニール袋に入れただけの簡易包装にされている理由だ。要は,丁寧な梱包はかえって邪魔ということではないか。

 都内にある山九の倉庫には,1日に600台ものパソコンやディスプレイが集まってくる。全国で見ると,1カ月に3万台程度。それらすべてに厳重に封がされていたり,梱包材が入っていたりすれば,開封だけでも手間なはずだ。そう思い立ち,山九のサンキュウ・コールセンターの延吉健治センター長に確認すると,延吉センター長は大きくうなずいた。そして,「手間だけじゃないんです。梱包材が入っていると,梱包材自体の処分費用も掛かってしまうんです」と説明してくれた。しかも,その費用は山九の負担だというのだから,困りものだ。