ARPU以外の収入を増やすには「通信以外の分野に横展開していくしかない。他の分野の企業などと収益を共有するモデルを構築することが重要になる」(アクセンチュアの武田エグゼクティブ・パートナー)。そこで各事業者は,(1)コンテンツやアプリケーション,(2)ポータル・広告,(3)金融関連に活路を求めている(図1)。

図1●ビジネスの拡大に向けた各社の取り組みの例<br>コンテンツやアプリケーションをはじめ,ポータル・広告,金融関連などに幅広く展開している。
図1●ビジネスの拡大に向けた各社の取り組みの例
コンテンツやアプリケーションをはじめ,ポータル・広告,金融関連などに幅広く展開している。
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 (1)のコンテンツやアプリケーションは各事業者が取り組んでいる。「18兆円と言われるコンテンツ市場の一部を手数料として徴収することがこれまでの成長戦略だった」(SOZO工房の太田パートナー)。現在は音楽とゲームが中心だが,今後はネットワークの高速化によって動画も加わる。ここに力を入れているのがNTTドコモだ。「動画サービスはコンテンツの魅力が重要になる」(辻村常務)ことから,2005年12月にフジテレビジョン,2006年2月に日本テレビ放送網,2006年11月に角川グループと提携しており,コンテンツの強化に余念がない。

 (2)のポータル・広告はソフトバンクモバイルが「Yahoo!ケータイ」で参入したのを皮切りに,KDDIやNTTドコモも力を入れ始めた。KDDI は携帯電話向けとパソコン向けのポータル・サイトを「au one」に統合して強化を進めているほか,検索エンジンやWebメールの提供でグーグルと提携。NTTドコモも2008年1月に検索サービスや検索連動広告などでグーグルと連携した。グーグルの広告配信プラットフォーム「AdWords」を活用した広告収入の共有で「早期に100億円の売り上げを目指す」(辻村常務)。

 (3)の金融関連は主にクレジット・ビジネスに関するもの。「国内の小売販売額に占めるクレジット決済の比率は25%程度に達しており,年々増加傾向にある。今後の伸びが期待できる有望な分野」(SOZO工房の太田パートナー)である。NTTドコモがクレジット決済(iD)とクレジット・ビジネス(DCMX)をいち早く展開しているほか,KDDIは三菱東京UFJ銀行と共同で2008年度半ばにモバイルネット銀行まで設立する。KDDIはクレジット分野だけでなく,預金・振り込み,保険,各種決済までフル・ラインアップの金融サービスを提供する予定だ。

強みを生かせる分野は多くある

NTTドコモ 辻村 清行 取締役常務執行役員 プロダクト&サービス本部長「携帯を活用したビジネスはまだまだ発展の余地がある」
NTTドコモ 辻村 清行 取締役常務執行役員 プロダクト&サービス本部長「携帯を活用したビジネスはまだまだ発展の余地がある」
写真:新関 雅士

 新たな収益源につながる分野はこれだけではない。「携帯電話の特徴を生かしたビジネスはまだまだ発展の余地がある」(NTTドコモの辻村常務)。携帯電話の最大の強みは千万単位の顧客ベースを抱え,ユーザーが肌身離さず持ち歩いていること。これを生かさない手はない。NTTドコモの辻村常務が今後期待の持てる分野として挙げるのがCRM(顧客情報管理)やOne-to-Oneマーケティングだ。携帯電話と連動し,顧客の商品購入履歴やポイントなどを管理するサービスを提供する。

 実際,NTTドコモはおサイフケータイとトルカを組み合わせ,ファストフード店やコンビニエンス・ストアなどの小売店向けにサービスを提案している。具体的には,ユーザーがおサイフケータイで購入した商品の情報を顧客情報と関連付けて記録し,ポイントを付与したり,トルカでクーポン券を発行したりする。ユーザーは精算の手間を省けるだけでなく,店舗ごとの会員カードやクーポン券を複数持ち歩かなくて済むメリットがある。