Part2「仮想環境で電子工作プログラミングに挑戦!」で,電子工作プログラミングの基本的な手順は理解できたと思います。Part3では,Part2で使った開発ツール「CodeWarrior」を引き続き利用してプログラムを作り,実際のマイコンで動作させてみます。

 本来,マイコンを利用するためにはLEDなどの部品を配線する必要があります。しかし,ハンダ付けや配線はちょっと面倒ですね。なのでここでは,Part2で予告したようにフリースケール・セミコンダクタ・ジャパンのマイコン評価ボード「DEMO9S08QG8」(写真1)を使うことにします。

写真1●マイコン評価ボード「DEMO9S08QG8」。ボードのほかにCodeWarriorやUSBケーブルが付属する
写真1●マイコン評価ボード「DEMO9S08QG8」。ボードのほかにCodeWarriorやUSBケーブルが付属する

 この評価ボードは8ビット・マイコン「MC9S08QG8」に加えて,ボタン・スイッチやボリューム抵抗,フォト・トランジスタ(光を受けると電流量を変化させるトランジスタ)などを搭載しています。それぞれのパーツはマイコンのピンに配線済みですので,組み立ての必要はありません。価格はオープンプライスです。

 この評価ボードには,大きく三つの機能があります。一つ目は,基盤に実装してあるLEDやスイッチを使って,マイコンをテスト動作させる機能です。すべて配線済みで,付属のUSBケーブルでパソコンとつないで,CodeWarriorから簡単にプログラムを送ることができます。マイコンの基本動作の学習にも向いています。

 二つ目は,テスト動作時のデバッグ機能です。Part2でも説明したように,マイコンMC9S08QG8は内部にデバッグ用の回路を集積しています。この回路に命令を送り込んでデバッグをするのですが,パソコンに直接接続することはできません。そこで,一般的にはパソコンに接続するためのインタフェース(例えばUSB)を備えた機器を接続して,そこからパソコンに接続します。DEMO9S08QG8は,この専用機器に相当する回路を搭載しているとともに,USBでパソコンに接続する機能を提供しています。ボードとパソコンをUSBで接続すれば,マイコンへのプログラムの書き込みとデバッグが可能になるのです。

 三つ目は,マイコン内部のフラッシュROMにプログラムを書き込む機能です。ボード上にあるマイコンを見ると,ソケットにはまった形になっています。このボードでプログラムを書き込み,ソケットからマイコンを抜き取って,自作の基板に差し込むという使い方も可能です。

 写真2は,DEMO9S08QG8を上から見たところです。左側にある縦長のチップが8ビット・マイコンMC9S08QG8,その右側を占めているのがデバッグ用の回路。上にはUSBとシリアルの接続インタフェースがあります。

写真2●DEMO9S08QG8を上から見たところ。マイコンのほかに,LEDやボタン・スイッチなどを確認できる
写真2●DEMO9S08QG8を上から見たところ。マイコンのほかに,LEDやボタン・スイッチなどを確認できる
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 ボードの下のほうを見ると,LEDが三つ並んでいます。その右隣には,ボタン・スイッチが縦に二つ並んでいるのがわかります。ボタン・スイッチの右側にある小さな部品がフォト・トランジスタです,光を感知して電流量を変えるので,この変化を読み取ってLEDなどの状態を変えるプログラムを作ることができます。

写真5●ボードの裏側には拡張端子がある
写真5●ボードの裏側には拡張端子がある

 ボードが備える接続端子は,USBとシリアルの二つです(写真3)。USBはバス・パワーに対応しており,基板の動作に必要な電力はパソコンからUSB ケーブルを通して得られます。端子と反対側を見ると,ACアダプタの接続端子があります(写真4)。ここからの電力でも基板は動作します。写真4の右端には丸い部品が見えます。これはボリューム抵抗器で,回転させると抵抗値が変わります。この変化を読み取るプログラムも作成できます。

 基板の裏側を見ると,拡張用端子があります(写真5)。この端子に自作の基板を接続して,その基板上で部品を動作させるプログラムも作れます。

写真3●ボードを横から見ると,USBとシリアルの接続端子が見える   写真4●写真3の反対側から見ると,ACアダプタの接続端子とボリューム抵抗器を確認できる
写真3●ボードを横から見ると,USBとシリアルの接続端子が見える   写真4●写真3の反対側から見ると,ACアダプタの接続端子とボリューム抵抗器を確認できる