XML(Extensible Markup Language)が登場して,はや10年の時が流れた。今では医療分野での電子カルテ検索システム,印刷業界での自動組版システムなどで広く利用され,その利便性(柔軟性,拡張性,親和性)が認められている。BtoB(企業間)型EC(電子商取引)やWebサービスなどのシステムにも浸透しており,標準的な技術としての立場を確立している。身近なところでは,ブログやSNS(Social Networking Service)でも“縁の下の力持ち”的な技術として利用されており,今やXMLの知識はすべてのITエンジニアにとって必須と言ってよい。

 しかし,そもそもXMLとは一体どういうものなのか,きちんと理解しているITエンジニアは意外に少ないのではないだろうか。XML関連技術は数多く存在するが,これらの全体像を正確に理解しているITエンジニアはさらに少数だろう。

 そこで今回は,XMLとは何なのか,一体何ができるのか,といったXMLの基礎知識から,XMLに関するさまざまな技術,XMLデータベースを用いたアプリケーション開発までを学べる本を7冊紹介しよう。

XMLの基本を学ぶ

 まずは,XMLの基本的な概念と技術を押さえよう。XMLの概要を理解するには,XML,XPathに始まり,XSLT(XML Stylesheet Language Transformations),DOM(Document Object Model),XQuery,XML Schemaなど,数多くの関連技術を理解しておく必要がある。

 マクロ的視点から,これらのXML関連技術を全体的につかめる書籍としては,「やさしいXML」「10日でおぼえるXML入門教室 第2版」「標準XML完全解説(上下巻)」をお薦めしたい。

 「やさしいXML」は,XMLの基本文法,XSLT,DOM,SAX(Simple API for XML)など,XMLを利用するときに必要な知識を一通り説明した入門書。途中からは,プログラミング言語としてJavaを使った解説になる。分かりやすい文体で,サンプルを交えながら説明しているため,最初の一歩として読むにはよいだろう。XMLとはどういうものかをサラっと理解したい人にも,お薦めできる。ただし,Javaに関する説明が少ないので,Javaの知識を持ち合わせていない人にとっては,理解しにくい部分もあるかもしれない。

 「10日でおぼえるXML入門教室 第2版」は,1日の勉強量が設定された,10日間のセミナー形式の入門書。XML,XPath,XSLT,DOM,DTD(Document Type Definition),XML Schemaなど,XMLを使うにあたって必要になる知識は広範囲にカバーしている。本書は,毎日の勉強の積み重ねで理解度が上がっていくことが実感でき,楽しみながらXMLを理解できる。「理論を覚える」というよりも,「実際に書いて覚える」というスタイルを採用しているので,読むだけの本よりも最終的な理解度は高いかもしれない。9日目にはクライアントサイド,10日目にはサーバーサイドでのXMLプログラミングを扱っているため,実際のアプリケーション開発のイメージもつかめる。

 「標準XML完全解説〈上〉」と「標準XML完全解説〈下〉」は,XMLとその関連技術を体系的にわかりやすく解説しているお薦めの本。実務でも十分に役立つ技術レベルであり,上述した2冊の入門書でXMLの概要を理解した後,上・下巻とも手元にそろえておいて損はない。ただし,XSLT,XQuery,XML Schemaについてはサンプルが不足しており,この本だけでは情報不足と感じるので,これらに特化した本を別途用意するほうがよいだろう。

技術者認定資格もある

 一通りXMLを勉強した人は,ぜひ「XMLマスター」資格の取得にチャレンジして欲しい。XMLマスターは,特定のベンダーや製品に依存しないXML技術者の認定資格である。2005年6月にV2(バージョン2)試験に刷新され,単純な知識を問う試験から応用力を重視した実践的スキルが要求される試験に生まれ変わった。

 このXMLマスターの試験対策本が「XMLマスター教科書 ベーシックV2」。各章ごとに,XML関連技術を理解するための要点が整理された解説と,実際の試験と同じ選択式の練習問題,その解答・解説がセットになっており,効果的に学習できる。技術に関する詳細な記述は多くはないが,比較的容易な文体でポイントごとに解説しているので,XMLの全体的なイメージを手軽につかみたい人にも向いている。