連載第2回では小規模な企業ネットワークの集計結果を分析する。ここでいう小規模ネットワークとは,つながるパソコンの台数が100台以下の企業ネットワークである。回答数は326件で全体(689件)の約半数に当たる。拠点数の平均は8である。それでは小規模ネットワークの実像を,インターネット接続のアクセス回線から見ていこう。
インターネットVPNの利用がダントツ
小規模ネットワークで最も使われているインターネット接続のアクセス回線はFTTH(fiber to the home)だった(図2-1)。次点はADSL(asymmetric digital subscriber line)。小規模ネットワークの企業ユーザーはブロードバンド回線を積極的に活用している。
WANサービスで採用数が多いのはインターネットVPN(virtual private network)である(図2-2)。昨年の調査では,WANサービスの最多はIP-VPNだった。今年の調査でインターネットVPN を採用した企業の自由回答欄を見ると,「2007年ころからFTTHとADSLでインターネット接続を進めていった。インターネットに接続できていないユーザーがいない状態になったので,VPNルーターを設置したり,フリーソフトを導入したりして,VPN を構築した」という声があった。ブロードバンド・サービスの普及がインターネットVPNの採用につながっているようだ。
IP電話の導入率は2割前後
IP電話の導入率は外線が2割強(図2-3),内線がほぼ2割(図2-4)と,いずれも低かった。外線にIP電話を導入した企業の自由回答欄には,「ADSLからFTTHに乗り換えたときにIP電話も合わせて導入した」としている。また,IP電話を導入したほかの企業の自由回答欄では,「従来のビジネスホンの機能がIP電話では実現できないことが多く,ユーザからは通話先によって音声品質が大きく下がるとのクレームもあり,従来と同等に使えるようにするために苦労した」との声があった。IP電話は,システムとしてまだ成熟度が不足しているようだ。
今回の集計結果では,小規模ネットワークに属する回答者の半数以上が「IP電話を導入する予定なし」と答えている。BフレッツでインターネットVPNを構築している回答者の自由意見欄を見てみると,「IP電話を導入するとなると,Bフレッツにすべてを任せることになるため,リスクが高い」として,IP 電話の導入を見送っていることがわかった。ビデオ会議/動画配信システムもIP電話と同様に,「導入する予定なし」が多数派だった(図2-5)。
メールのアウトソーシングが進む
今回の調査では,企業ユーザーのアウトソーシングの度合いを調べるために,「社外との通信用のメール・サーバー」と「社外向けのWebサーバー」の運用について尋ねた。
小規模ネットワークでは,メール・サーバーを自社に設置せず,「事業者のサービスを利用する」という回答が最も多かった(図2-6)。このところ,メール関連のアウトソーシング・サービスを提供するプロバイダが増えてきているという環境が後押ししているようだ。
社外向けのWebサーバーに関しては,「自社に設置」が最多だった(図2-7)。一方で,Webサーバーを設置していない企業ユーザーが全体の約2割を占めている。小規模ネットワークでは,Webサーバーによる情報公開自体がまだ普及途上にあるといえる。