SaaSやECなどを手がけるサービス事業者は,独自に巨大なデータ・センターを運営していることが多い。米アマゾン,米グーグル,米セールスフォース・ドットコムなどだ。これらの企業が自ら構築して利用する基盤(プラットフォーム)を,他のユーザーにサービスとして提供する「PaaS」(platform as a service)と呼ぶサービスが登場している(図1)。

図1●多数のユーザーが利用するSaaSのプラットフォームをサービスとして提供する「PaaS」
図1●多数のユーザーが利用するSaaSのプラットフォームをサービスとして提供する「PaaS」
セールスフォース・ドットコムやグーグル,アマゾンなどがPaaS型のサービスを提供している。

 ユーザーにとっては,(1)既に実績あるプラットフォームを活用して自らがSaaS事業者としてサービスを展開できる,(2)自前でSaaSを提供するためのミドルウエアやハードウエアを用意しなくても済む,という利点がある。

 PaaSの代表例は,セールスフォース・ドットコムが2007年4月から提供を開始した「Force.com」,アマゾン・ドットコムが2006年から提供中の「Amazon Elastic Compute Cloud」(Amazon EC2),グーグルが4月にプレビュー版を公開した「Google App Engine」などだ。

 これらの中でForce.comは日本語で利用できる。SaaSアプリケーション開発用の独自プログラミング言語「Apex」や,Salesforce の機能を外部プログラムから使うためのAPI(application programming interface)などを用意。ユーザーはForce.com上で独自のSaaSアプリケーションを開発できる。

 日本の事業者もPaaSの展開を進めている。KDDIはマイクロソフトと協業してSaaS向けプラットフォーム「Business Port」を4月から提供中だ。業務ソフトなどを開発するベンダーに対してデータ・センターやネットワーク,課金システムなどSaaS提供に必要なプラットフォームを用意する。「中堅・中小企業向け業務ソフトを開発する企業などがSaaSに参入しやすくなる」(KDDIソリューション事業統括本部ソリューション戦略本部アプリケーション推進部の大貫祐嗣部長)。

 Business Portの第1弾サービスは,マイクロソフトの「Outlook」のSaaS版である「Business Outlook」。9月以降,オービックビジネスコンサルタントなどが中小企業向け業務ソフトをSaaSとして,Business Port上で提供する予定だ。