リソース・オンデマンド型サービスは,サーバーのCPUやメモリー,ストレージ装置などのハードウエアを含めてユーザーに“サービス”として提供する。

 そのため,「場所貸し」であるハウジング型サービスとは異なり,データ・センターの立地についてユーザーは気にする必要がない。さらに,複数のデータ・センターが仮想的に一体運用され,そこで同等のリソースが提供されれば,企業ユーザーはどこのセンターを利用しても同じサービスを受けられる。

データ・センターを広帯域ネットで一体化

 「仮想的に一つのデータ・センターとして扱うが,実際のリソースは各所に分散しているので,BCPの面で効果が期待できる」。英BTのキース・マレイビジネス&ストラテジー開発担当部長はデータ・センター自体の仮想化の利点についてこのように説明する。例えば災害時に,ある場所のセンターが機能しなくなっても,別の場所のセンターからリソースを調達できる。

 同社はアジア・太平洋地域に点在するデータ・センター間を広帯域ネットワークで接続し,あたかも一つの“仮想データ・センター”のように利用できるサービスの準備を進めている。「BTの仮想データ・センターで用意するサーバー,ネットワーク機器,ストレージなどは,物理的なデータ・センターの立地にかかわらず,ユーザー企業は必要に応じてアクセスして利用できる」(マレイ担当部長)。

 ユーザー企業は,ネットワークさえつながっていれば,複数のデータ・センターのリソースをどこからでも自由に使える(図1)。しかも,アジア・太平洋地域の各センターを結んだ仮想データ・センターを使って「1カ国だけでなく,グローバルな冗長化構成が可能になる」(同氏)。

図1●複数拠点のデータ・センターをネットワークで結ぶ仮想データ・センター
図1●複数拠点のデータ・センターをネットワークで結ぶ仮想データ・センター
企業ユーザーは,場所を選ばずに複数のデータ・センターのITリソースを利用できる。英BTは,アジア・太平洋地域のセンターを結ぶ仮想データ・センターのサービスを提供する予定。
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仮想DCはネットの課金が1カ所分で済む

 国内の事業者からもユーザーは仮想データ・センター的なサービスを受けられる。ユーザーはデータ・センターの立地を意図しなくても,災害などに対するリスク分散が可能になる。

 住商情報システムのデータ・センター「netXDC」は,東京と大阪にある計3カ所のセンター間を10Gビット/秒の回線で接続し,あたかも一つの仮想データ・センターのように利用できるのが特徴だ。こうした構成が可能になることで,「ラックを別々のセンターに預けたシステムを(一体的に)運用するユーザーもいる」(住商情報システムの高野健プラットフォームソリューション事業部門IT基盤ソリューション事業部netX事業開発部長)という。ユーザー自身のサーバー・ルームやシステム・センターとnetXDCを接続して,一体運用するといった使い方も可能だ。

 この場合,データ・センターに接続するためのネットワーク利用料金は,3カ所分ではなく1カ所分だけで済む点もユーザーにとってはメリットだ。

 BTの仮想データ・センターの場合でも,ユーザーは各国にあるセンターと個別に契約するのではなく,一つの仮想データ・センターを使う契約をするだけでよい。ユーザーにとっては「適正なコストでBCPを実現できる」(マレイ担当部長)のが大きなメリットになる。

 マレイ担当部長によると,実際に仮想データ・センターのサービスを先行して提供している英国では,金融機関がBCPの目的で利用するケースがあるという。