データ・センターのサービスに不満を持つユーザーは多い。本誌が2月に実施した読者モニター へのアンケートでは,「コストが高い」,「拡張要件に即応できない」といった声が挙がっていた。こうした不満を解消し,ユーザーの“わがまま”に応えるのがリソース・オンデマンド型サービスである(図1)。

図1●リソース・オン・デマンド型サービスの提供形態
図1●リソース・オン・デマンド型サービスの提供形態
サーバー,ストレージのリソースを仮想化技術を使って分割して提供。企業ユーザーはITリソースを必要に応じて月額料金で利用できる。
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 リソース・オンデマンド型サービスによって,ユーザーは突発的な短期プロジェクトやテスト環境構築に対応できるようになる。一時的に,しかも望んだ分だけ,使用するリソースを増やせるからだ。

 例えば,EC(電子商取引)サイトを既に運用しているユーザーであれば,「キャンペーン・サイトを2カ月限定で開設したい」という際に,2カ月間だけ仮想サーバーのCPUの処理性能やディスク容量を増強して対応。期間終了後には再び通常の使用量に戻す,といった柔軟な変更が可能になる(図2)。ユーザーは一時的なプロジェクトのために資産を持つ必要がないため,無駄な出費を抑えられる。

図2●リソース・オンデマンド型サービスでは,負荷状況に応じてサーバーやストレージの使用量を柔軟に増減できる
図2●リソース・オンデマンド型サービスでは,負荷状況に応じてサーバーやストレージの使用量を柔軟に増減できる
CTCのIT統合基盤サービスでは,年間契約のベースプランと月単位契約のスポットプランを用意。大きな負荷がかかる期間だけ,使用するサーバー,ストレージの使用量を増加できる。
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既存ユーザーなら「翌日」,「3日以内」

 短期間のリソース増減やコスト削減というユーザーの要求にデータ・センター事業者が応えられるのは,データ・センター内にリソース・プールを用意して,サーバーやストレージ,ネットワーク機器などを即座に提供できる体制を整えているからだ。

 例えば,NTTコミュニケーションズの「グリーンホスティングサービス」やCTCの「IT統合基盤サービス」では,仮想化環境のインフラ共通基盤上に仮想マシンや仮想ストレージの余剰性能や容量を集約したリソース・プールを用意。ユーザーに安定的にリソースを提供できる体制を整えている。

 各データ・センターがどの程度のリソース・プールを抱えているかは非公表だが,例えばCTCでは,ユーザー企業が追加を申し込んでから通常3日以内,最短で翌日には追加のリソースを利用できるという。

 ただし,「3日以内」,「翌日」といった要求を実現できるのは,年間契約の基本プランを結び,既に一定のリソースを使っているユーザーであることが条件。データ・センターにリソース・プールが用意されているとはいっても,新規に契約するユーザーの場合は仮想化ソフトのライセンス手続きなどが新たに発生するからだ。既に年間契約を結んでいるユーザーであれば,こうした手続きは短時間で済む。

 新規ユーザーの場合でも,初期投資コストの圧縮や納期の短縮という恩恵は得られる。データ・センター事業者にリソース・プールがあるため,新規ユーザーのためにまったく新しいサーバー機やネットワーク環境を整える必要がないからだ。仮想ソフトも既に使っているため,ライセンスの追加購入だけで済む。「データ・センターで新たに物理的な機器を用意する必要がないため,1週間もあれば提供可能」(CTCデータセンター事業グループDCサービス・技術本部サービス運営部第1課の村上政志氏)だという。

リソース使用量が分からなくても使える

 事前にCPUやメモリーなどリソースの使用量が分からない場合は,ある程度余裕を持たせて見積もるのが一般的。だが,余裕分は本来無駄なコストである。この無駄をなくせるサービスも出てきた。

 NTTコムの「グリーンホスティングサービス」は,CPUとメモリーをユーザー間で共有する「シェアタイプ(ベストエフォート)」と,CPUとメモリーの性能上限値をユーザーに割り当てる「固定タイプ」の二つの利用形態を用意。前者のシェアタイプは,事前に使用量が確定できない場合に選択する利用形態である。

 シェアタイプでは,ディスク容量は仮想マシンごとに固定で割り当て,CPUとメモリーは仮想マシンごとにあらかじめ使用上限値を設定。使用上限値が大きく設定されている仮想マシンでも実際の使用量が小さい場合には,使わない分を他の仮想マシンに振り分けることが可能だ。

 ユーザーは,まずはシェアタイプを利用して必要となるCPUやメモリーの量を見積もってから,固定割り当てタイプに移行するといった使い方ができる。