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開発プロセス

PMO(プロジェクトマネジメントオフィス)を生かす

ITpro

第45回 ユーザー企業の組織的PM力を強化せよ(1)

2008/07/14

個々のマネジャがプロジェクトマネジメント(PM)の能力を高めることは不可欠だ。しかし,企業がそのような研修の場を提供するだけで安心しているとしたら,根本的な問題が見えていないと言わざるを得ない。個人レベルだけでなく,「組織」としてのプロジェクトマネジメント力も,早急に高めていく必要がある。

高橋信也
マネジメントソリューションズ 代表取締役


 改めて言うまでもありませんが,ユーザー企業において,システム開発プロジェクトの数は年々増加しています。また,一つひとつのプロジェクトの複雑さ,大きさも増しています。

 ある金融機関の情報システム部では,プロジェクトの数,規模,予算が3年前の倍になり,その結果,今まで以上にプロジェクトマネジメントを強化しなければならなくなったそうです。また,プロジェクトマネジメントの研修は以前にも増して需要が多く,単にPMP(Project Management Professional)資格を取得するためだけでなく,現場での実践力の向上を主目的としたトレーニングも増えています。

「個人」のスキルアップも重要だが,「組織」としての体質強化を

 ユーザー企業がプロジェクトマネジメントの強化に取り組み出している背景には,下記のような問題があります。

・火を噴いてからでないとプロジェクトの問題が明るみに出ない
・ベンダーやコンサルティング会社の言うがままになっている
・見積もりの妥当性が不明瞭
・開発ベンダーに聞かないとプロジェクトの状況が分からなくなっている
・自社システム部門はユーザー部門とベンダーの調整役になり切れていない

 これらの問題を解決すべく,情報システム部門や情報システム子会社の方々はプロジェクトマネジメントのスキルアップのために日夜努力されていることと思います。しかし,根本的な問題が解決されないまま放置されていないでしょうか。

 それは上記のような問題の根源が,個人レベルのプロジェクトマネジメント力にあるのではなく,「企業組織として,個々のプロジェクトにどこまで口を挟むべきか,首をつこっむべきか」という方針が定まっていないことにある――と考えているからです。このような問題を抱える企業はかなり多く,結果として「組織的なプロジェクトマネジメント力」の低下につながっています。

だいたい失敗に終わっている

 組織的プロジェクトマネジメントの代表例は,本連載のテーマでもあるPMO(プロジェクトマネジメントオフィス)です。ただし,ユーザー企業として各プロジェクトにPMOを組織し,プロジェクトマネジメントを強化すればよいかというと,それはそれで負荷やコストがかかり過ぎます。一般的にユーザー企業は,複数プロジェクトを扱う「“プログラム”マネジメント」や,企業全体のプロジェクトを扱う「“エンタープライズ”プロジェクトマネジメント」を行えばよいでしょう。

 これまで本連載では単体プロジェクトにおけるPMOを対象に話を進めてきましたが,複数プロジェクトにおけるプロジェクトマネジメントやPMO(“プログラム”マネジメントオフィス)では,その性格が多少異なります。それぞれのユーザー企業における定義の仕方にもよりますが,一般的には「予算管理」「標準化推進」「火消し部隊」としての役割を担うことが多いようです。日本のシステム・インテグレータでも,2000年ごろから予算管理や標準化推進を目的としたPMOが次々に導入されました。予算管理を行う上で,「プロジェクトポートフォリオマネジメント(PPM)」を導入しているシステム・インテグレータもあります。

 このような組織は,各プロジェクトの立場から見ると,“お上(おかみ)”のような存在であり,煙たく感じられることが多いようです。実際のところ,ほとんどの企業ではうまく機能していません。

 もちろん,予算管理,標準化推進,火消し部隊といった役割をそれなりに果たしているケースはあります。しかし,個々のプロジェクトとうまく連携を取りつつ,プロジェクトにとっても必要とされる存在として認められている組織は,本当に一握りです。そもそも火消し部隊としての役割は本末転倒で,火が噴かないようにプロジェクトマネジメントを支援することが本来のPMOの役割です。

 では,ユーザー企業として,どのようなPMO組織を構築すればよいのでしょうか。そのポイントは下記のようになります。

(1)プロジェクト管理情報ネットワークを構築する
(2)課題のエスカレーション・プロセスを定着させる
(3)プロジェクト管理の必要性を“腹落ち”させる
(4)PMO側のスタッフのマインドセットを変える
(5)プロジェクトから必要と思われるような「PMOの実績」を上げる

 次回は,上記のポイントについて詳しく述べていきたいと思います。


高橋信也(たかはし しんや)

 1972年福岡生まれ。修猷館高校を卒業した後,上京。上智大学経済学部卒。ゼミは組織論,日本的経営の研究。大学卒業後,アンダーセン コンサルティング(現アクセンチュア)入社。CやC++によるプログラミングから業務設計まで幅広い工程を経験した後,2001年よりキャップジェミニのマネジャとして経営管理・業績管理のコンサルティングプロジェクトに携わる。

 コンサルタントとしての外部の目からだけではなく,内部の目でマネジメントを経験したいとの思いから,SONY Global Solutionsへ入社。その当時,最年少プロジェクトマネジャとなる。グローバルシステム開発プロジェクトのPMOリーダーとして活躍。インドにおけるオフショア開発を経験。

 コンサルテーションから,自社開発のソフトウエア提供,改革実施後のチェンジマネジメントまで,「知恵作りのマネジメント」を支援するマネジメントソリューションズを設立し,現在に至る。連絡先は info@mgmtsol.co.jp

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