会員制店舗「サムズクラブ」担当のグレゴリー・ジョンストン上級副社長 会員制店舗で想定するメリット
会員制店舗「サムズクラブ」担当のグレゴリー・ジョンストン上級副社長
会員制店舗で想定するメリット
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 「特売品として扱ってもらうにはICタグ張り付けが絶対条件となる」――。米ウォルマート・ストアーズへ商品を納入している業者は今、このうわさに戦々恐々としている。全米で4100店舗、ワールドワイドでは7200を超える店舗を有し、2008年1月期の売上高が3745億ドル(約39兆円)という世界最大の小売業者ウォルマート。そこで特売品として扱ってもらえないことは、納入業者には大きな痛手である。

 ICタグの導入をいち早く宣言したウォルマートが、納入業者に対してICタグの張り付け要請を始めたのは2005年1月。3年たってもタグ付きで納品される商品は全体の5%に遠く及ばないとされる。その理由は、納入業者がICタグ張り付けに消極的なことにある。

 一般に米国では、顧客が店頭で商品を探したとき、品切れしている確率は8%といわれる。ICタグを使って店頭在庫数を把握すれば品切れ率を抑えられる。販売機会が増え、納入業者とウォルマート双方が利益を得る――。それがウォルマートのICタグ戦略だ。

 しかし、タグの張り付けにはコストがかかる。捕らぬ狸の皮算用では納入業者は動かない。数が出ないからタグの単価が下がらず、納入業者の食指が動かないという悪循環に陥っている。そこでウォルマートが「要請」から「強制」に動くというのが、冒頭のうわさである。

 うわさが出るのには理由がある。ウォルマートは今年1月、会員制のバルク販売店舗「サムズクラブ」で全納入業者に対してICタグの張り付けを義務化した。対応しなければパレット当たり2ドルの“罰金”を課す(図1)。

図1●米ウォルマート・ストアーズが会員制店舗「サムズクラブ」での“罰金”制度を全納入業者にレターで通知
図1●米ウォルマート・ストアーズが会員制店舗「サムズクラブ」での“罰金”制度を全納入業者にレターで通知
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 こうした強制は当然、納入業者の反発を生む。「店頭における品切れはウォルマートの責任。その解決のために納入業者に負担を強いるというやり方が許せない」。ある日本の大手納入業者は怒りが収まらない。業者の反発を覚悟してまで強制に踏み切るウォルマートに勝算はあるのか。その全容を明らかにする。