小林 信次
マークアップ・エンジニア
小林 信次 茨城県出身。1980年生まれ。専修大学経営学部卒業後,1年弱のニート生活を経て販売代理店の営業職を経験後,有限会社アイエイトワンに入社。主に,Webディレクション,マークアップを務める傍ら,講師活動・執筆活動を行う。allWebクリエイター塾ではCSS講習の講師。著書に「XHTML&CSSデザイン |基本原則,これだけ。」(共著,MdN発行)がある。

 「css nite MT4LP5」というイベントが2008年4月5日にありました。CMS(コンテンツ管理システム)「Movable Type(以下MT)」業界のエキスパートが,MT4.1のこんな使い方があるよ,ということを説明するイベントです。せっかくの週末,しかも話題といえばMTのことだけというイベントであるにもかかわらず,参加者は400名。皆さんMTに興味あるんだな,と実感しました。

 さて,それでは実際の需要は,と言うと,どうなのでしょうか? ここではMTだけではなく,CMSの需要という意味で見ていきます。また,ナショナル・クライアントと呼ばれるような大企業の案件などは除外します。それくらいの規模の企業サイトであれば,何かしらのCMSを使っていて当然だからです。

 というわけでここでは,せいぜい10名前後くらいまでの制作会社(弊社もその内の一つです)が,中小・個人経営の企業や飲食店などのサイトを制作するというケースでCMSについて考えてみました。Web制作業界で最も多いと思われるケースです。

 結論から言ってしまえば,クライアントからホームページの制作を頼まれてそのまま作っているような感じであれば,CMSの需要はほとんどありません。クライアント自身がCMSという概念を知らない場合がほとんどですし,知っていたとしても制作するサイトはせいぜい30ページ程で,公開後に更新が頻繁にかかるようなこともないからです。

 「本当は更新したいのだけど,制作会社に発注するのが面倒だからまあいいか」というケースもありますよね。制作を手がけている我々にとっては「ちょっと待って」と言う状況ですが,現状では,「とりあえずホームページを作ってほしい」というこうした案件が最も多いのも事実です。

 上記は,「クライアントからホームページの制作を頼まれてそのまま作っている」場合のお話です。では,クライアントからホームページの制作を頼まれた際に,クライアント企業の業務内容を根掘り葉掘り聞いたり,ホームページを持つことで御社のビジネスに何が起きたら素敵ですか? などとヒアリングする場合にはどうでしょうか?

 例えば,街の飲食店がクライアントの場合は,季節の限定オススメ料理をアピールしたいとか,一時的に貴重なお酒を入手できたのでアピールしたいとか,ホームページの制作に合わせて定期イベントを開催したいのでそれを告知したいとか,何かしらリアルタイムにホームページに反映させたい!ということが出てくかもしれません。

 そんなとき,CMSを提案できるだけのスキルを持っていれば,単なる受託ではなく,新たなキャッシュフローを生むことができます。現状では,CMSの需要は,待っているだけではなかなかありません。クライアントが魅力的に思う提案ができ,かつそれを実現するためのスキルを磨いておいて初めて,CMSを活用するきっかけを作れるというわけです。

 魅力的な案件は,いつ舞い込んで来るかわかりません。そんなときに,CMSでの実装ができないのでお断りするしかない,ということがあってからでは遅いのです。日々たくさんの技術が生まれては消えていくWeb業界です。追いかけるのは大変ですが,制作者は日々それを勉強しなければ新たなステージを切り開けないということでしょう。半分は自戒の意味も込めて…。