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よりぬき「フリー・プログラマの華麗な生活」

基礎教育の目的って何だろう

中條 達雄=フリー・プログラマ 2008/07/09 日経ソフトウエア
出典:日経ソフトウエア2003年5月号123ページ
(記事は執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります)
目次一覧
1960 年生まれ,独身フリー・プログラマの生態とは? 日経ソフトウエアの人気連載「フリー・プログラマの華麗な生活」からより抜きの記事をお送りします。2001年上旬の連載開始当初から,2007年に至るまでの生活を振り返って,週2回のペースで公開していく予定です。プログラミングに興味がある人もない人も,フリー・プログラマを目指している人もそうでない人も,“華麗”とはほど遠い,フリー・プログラマの生活をちょっと覗いてみませんか。

 前回(「パソコンの個人授業をしてみたら」)の続きである。知り合いのふーちゃんは,20代も半ばに差しかかって昔のように稼げなくなったこともあり,水商売から足を洗うことを決意。フツーの会社でフツーのアルバイトをするためにパソコンを勉強することにした。当初は私が個人授業でWordやExcelを教えていた。だが,上達が頭打ちになってきたこともあって,親におねだりしてパソコン学校に通うことになった。

 ふーちゃんが選んだパソコン学校は,Webクリエータの養成を標ぼうしているところであった。話を聞くと,Webコンテンツ制作を手がけているグループ企業の一つで,卒業した人はそこから仕事を紹介してもらうこともできるという。もちろんこれは,卒業すれば必ず仕事がもらえることを意味するわけではない。とは言え,ちゃんとした就職活動をしたことがないふーちゃんにとって,卒業すれば仕事がもらえる(かもしれない)というのは,魅力的であったようだ。

 その学校でふーちゃんが選んだのは50万円強のコースである。マウスの操作方法から始まって,レタッチ・ソフト(Photoshop)やドローイング・ソフト(Illustrator)の使い方などを教えてくれるらしい。この学校は,生徒が授業料を払ってチケットを受け取り,このチケットを使って好きな時間の講義を受けるというシステムになっている。こうした仕組みの方が,社会人やフリーターに都合がよいのであろう。

 生徒はOLや主婦風の人から40~50代の男性まで幅広い。授業では,1回の講義ごとにどこからともなく生徒が集まって,その講義が終わると散っていくという感じ。一つの教室に10数人が集まるが,そうした人たちが特別に顔見知りになるということもないそうだ。

通り一ぺんのテキストに通り一ぺんの講義

 私はテキストをざっと見せてもらった。ウィンドウの開き方やブラウザの使い方が一とおり書いてあるが,まさに通り一ぺんという感じで内容は若干お粗末であるように思えた。講義の方も,私が聞いた範囲では,熱意を持って教えている講師が少ないように感じられた。基本的にテキストに書いてあることしか教えない。ちょっとでも機を逸したら質問しづらい雰囲気があるし,テキストから外れた質問だと答えられないこともあるらしい。教室では一人に1台パソコンをあてがっているが,講義の最後に「じゃ,今日教えたところを,各自やってみましょう」という程度にしか使っていないようである。

 私の個人授業である程度の基礎知識を身に付けていたふーちゃんにとって,最初の半月から1カ月はひどく退屈であったらしい。隣のおじさんが授業についていけなくて困っていた様子などをおもしろおかしく話してくれたりした。そうこうするうちに,スキャナの使い方を覚えてきたり,Photoshopを習ってきたりするようになった。ただ,高機能なソフトであるPhotoshopの一体何を,わずか数回の授業で習ってきたのかはわからない。たぶん本人も,よくはわかっていないのではないかと思う。残るのは,「Photoshopを触ったことがある」という“経験”だけであろう。

 こうした話を聞くと,大金を払ってまでパソコン学校に行く必要性があるのかと疑問に感じる人は多いかもしれない。私はふーちゃんの話の半年ぐらい前にもほかの知人から,パソコン学校に行こうと思う,と相談を受けたことがあった。この女性はWebデザイナとして仕事を受けた経験もあったのだが,個人で仕事をしていたので,世間から見た自分のレベルがわからなくて不安だったのだという。この女性がパソコン学校に数十万円を支払って得たものは,「私のレベルでもそれなりに通用する」という自信,あるいは安心感であった。

 そうなのだ。基礎教育の目的はおそらく,使いこなせるようになることではない。たとえ通り一ぺんであっても,触ったり,動かしたりしたことがあるかどうかが重要で,それが本人の自信につながれば「結果オーライ」なのであろう。自信を持てれば,実務を通じて上達するという道が開ける。私がふーちゃんに個人授業をしていて「上達が頭打ち」になったのは,あたりまえのことだったのだ。

 そう悟った私を尻目に,ふーちゃんは約3カ月かけてパソコン学校を卒業した。彼女はもうExcelを使った経験はあるし,Wordを使ってイラストを作るのも他人に負ける気はしないという。これらがすべて私が個人授業ですでに教えていた内容であると,あえて言うつもりはない。

 そしてもう一つ。どうやらパソコン学校は授業料のスポンサにも夢を与えてくれたようだ。「うちの子はパソコン学校で習ってるんですよ」と触れ回ったかどうかは定かでないが,学校を卒業して半月後,ふーちゃんは両親の知り合いのフツーの会社に,コネでアルバイトが内定したのである。めでたしめでたし。

 その後ふーちゃんは,その会社で実際に働き始めた。パソコンが共用だったので,ふーちゃんがかな入力に切り替えたまま帰ってしまったら,次に使う人がローマ字入力に戻せなくて困ってしまったなどのエピソードはあったものの,それなりにWordやExcelを使った一般事務のアルバイトに従事していたらしい。だが,2カ月後にそこを辞めてしまった(彼女自身の責任でないことは言明しておこう)。今はまた,プータローに逆戻りしてしまったらしいと聞いている。

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