ウィルコムは5月26日,2009年に開始する次世代PHSサービスの詳細を発表した。サービス名称は「WILLCOM CORE」。最大速度は100Mビット/秒,通信できる移動速度は時速300kmという目標値を示した。約30社と協力してWILLCOM CORE網に定点カメラをつなぎ,公共目的に利用する新構想も明らかにした。

 WILLCOM COREが目標とする仕様は,(1)伝送速度が最大100Mビット/秒,(2)通信できる移動速度は時速300km以上,(3)都心部でも安定した速度--の3項目である(図1)。

図1●次世代PHS「WILLCOM CORE」が目指す仕様
図1●次世代PHS「WILLCOM CORE」が目指す仕様
次世代PHSで目標とする3項目を5月26日に発表した。写真は基地局と端末の実験機。

30MHzをフルに使えば最大120メガ

 (1)の伝送速度については,通信に使う周波数を拡大するとともに,複数のアンテナを使って伝送効率を高めるMIMO(multiple-input,multiple-output)技術を利用して高速化する。サービス開始から1年以内をめどに,100Mビット/以上を実現する。

 ウィルコムは伝送速度を約20Mビット/秒と公称していた。これは周波数が10MHz幅で,MIMOを使わない場合。総務省から割り当てられた30MHz幅を最大限に使い,MIMOで2ストリームを同時に送信すれば,単純計算で,6倍の120Mビット/秒となる。さらにMIMOのストリーム数を増やし,200M~300Mビット/秒へ高速化する研究も進める。

 (2)の移動速度については,新幹線に乗りながらでも通信ができる状態を目指す。「新幹線が高速に移動する郊外では,半径5km以上の広い通信範囲を持つ基地局を設置して対応する」(次世代事業推進室の上村治室長)。まだ実機を使った実験はしていないが,シミュレーション上では時速300km以上で通信できることを確認したという。

 (3)の安定した通信速度を実現するためには,通信が混雑しやすい都市部に数多くの基地局を設置する。従来のPHSと同様に,一つの基地局がカバーする範囲が小さいマイクロセルを構築していく。全国で約16万カ所の現行PHSの基地局を,WILLCOM COREに順次対応させる。2009年春の試験サービスでは首都圏など一部エリアに限るが,2009年10月の正式サービス開始時には,東京,大阪,名古屋に拡大する。2012年3月には人口カバー率50%,2013年3月には同90%を目指す。

用途拡大を目指し30社と研究会

 同時期には,同じ広域データ通信のモバイルWiMAXのサービスも始まる。これら他方式に対抗するため,新たな用途を生み出す活動にも力を入れる。その一つが,定点カメラやセンサーをWILLCOM CORE網に接続して防犯,防災,観光,環境保護などに役立てる構想である(図2)。「公共用途から検討を進め,WILLCOM COREに付加価値を付ける」(喜久川政樹 社長)。

図2●定点カメラやセンサーと連携
図2●定点カメラやセンサーと連携
定点カメラなどをネットワークにつなぎ公共目的に利用する構想を示した。

 具体的にはカメラなどにWILLCOM COREの通信機能を搭載し,データを基地局に送る。カメラやセンサーはビルの屋上など基地局の設置スペースに据え付ける方法もある。将来は,カーナビゲーション・システムにカメラの映像を送信するといった用途も想定する。2008年夏までにシャープ,インテルなど約30社と研究会を発足し,ビジネス展開を検討する。