アフリカは,携帯電話事業を手がける企業から,新たな成長市場としての期待を集めている地域である。53カ国があり,各国の文化的背景や経済規模,発展段階が多様なため,一くくりにすることは難しい。実際,旧宗主国系の事業者だけでなく,潤沢なオイルマネーを持つ中東の事業者が,進出の機会をうかがっている。

(日経コミュニケーション編集)

 最近の経済の急速なグローバル化の動きに伴い,これまで経済発展とは無縁と思われていた感のあるアフリカが,2001年以降全体で3~5%の年平均経済成長率を維持するなど,顕著な成長を見せている。

 従来アフリカといえば,多くの国が政治的に不安定で内戦に発展する国もあり,貧困やエイズ問題など様々な問題を抱えてきた。常に世界銀行などの国際機関や,日本,かつての宗主国であった西欧諸国が援助を続ける対象で,一部の国を除けば世界経済の動きとは一線を画した地域と見る向きもあった。

 しかしながら特にこの数年,力をつけた中国を筆頭とした新興国が,資源確保などの目的で短期間のうちにアフリカ各国に進出したことにより,その構図が明らかに変わってきた。ほかにも同じポルトガル語を話す国を中心に進出するブラジルなどの動きも見逃せない。

 その一方で,マイナス面の課題も明らかになりつつある。一部の国または特定のグループに富が偏在しつつあること,昨今のエネルギー価格高騰に起因した食糧価格をはじめとする急激な物価上昇により暴動が多発することなど,富裕層と貧困層の格差がかつてより顕著になる状況にある。これらは今後の世界の不安定要因になりかねない側面もある。

5地域ごとに異なる顔を持つアフリカ諸国

 一口に「アフリカ」といっても,53カ国がある。各国の文化的背景,経済規模や発展段階も多様なため,本来は一くくりでは容易に語れるものではない。地政学的に分けると,地中海に面した北アフリカ(一部はアラブ,西側はマグレブ諸国とも呼ばれる)と,サハラ砂漠以南のサブサハラアフリカの二つに大別できる。北アフリカは欧州諸国と距離的・歴史的にも関係が深く,アラビア語圏(イスラム圏)であることで,むしろ中東・アラブ諸国とグルーピングされ,サブサハラとは一線を画している。

 サブサハラアフリカは,東アフリカ,南部アフリカ,西アフリカと三つに地域を分けられる(中部アフリカを分け,4地域とする場合もある)。東アフリカはインド洋に面し,インドなど南アジア地域との関係が深い。最近ではインドなどの経済発展により,その関係がさらに強化されつつある。代表的な国はケニアやタンザニアであり,野生動物などが特に多い地域である。

 南部アフリカはアフリカ大陸では最も気候が良い地域で,古くから欧州の白人が移住したことや,天然資源が豊富なことにより,南アフリカ共和国を筆頭に経済レベルが特に高い。南アフリカ共和国はアフリカ大陸の全GDPの約4割を占める,地域の大国である。かつてのアパルトヘイトで孤立し,経済が停滞した時期があったが,90年代半ばの民主化の後,経済的障壁が緩和された。現在でも治安面の問題はあるものの,2010年のサッカーW杯開催などプレゼンスが拡大しつつある。

 西アフリカは最も経済的に立ち遅れ,政治的不安定な小国が多く,かつての宗主国への経済依存度が相対的に高い地域である。この地域ではアフリカ最大の人口を持ち石油資源が豊富なナイジェリアが中心的な存在にある。

 日本政府はアフリカの持続的成長の支援などを目的として,2008年5月末に「第4回アフリカ開発会議」(TICAD IV)を横浜で開催した。この会議は日本の主導で1993年に始まり,以降5年ごとに開催されている。アフリカ各国から元首級が集まり,これに付属する形で各種イベントも行われる。

 ただ中国も数年前から類似の会議を行うようになり,最近ではアフリカ争奪戦の感がなくもない。アフリカ支援と地球温暖化など環境面の課題が主要議題になった2008年7月の北海道洞爺湖サミットとともに,日本のプレゼンスが今後どの方向に進んでいくのか注目される。