Q: 入社2カ月の新卒社員ですが,どう学習を進めればいいのかが分かりません。

 現在入社2カ月目の新卒社員です。プログラミングなど全くやったこともなく,右も左も分かりません。「1年でインフラ関係を任せられるようになれ」という指示のもと,必死で勉強の毎日です。3年後を目標に,一通りの技術を身につけて転職しようと考えています。

 そこで,どう学習を進めていったらよいのかが,手探り状態で分かりません。今いる会社は,上司が一人しかいなく,そのほかは協力会社からの協力のもと,事業をこなしています。自分はほぼ独学で,本とネットを中心に自分なりに解釈しながら,勉強しています。

 基本的な問題すぎて,アドバイスにすら困るとは思いますが,一言でも結構ですのでなにかアドバイスをいただけないでしょうか?
(インフラ関係の担当者見習い/男性・22歳)

A: 資格/実戦/研修で,最も関心のある分野を徹底的に学習せよ。

 ご質問を拝見するかぎり,そのような会社はなるべく早く辞めるべきです。「1年でインフラ関係を任せる」などというのは,全く現実的ではありませんし,教育体制もないのでは,あなたは確実にボロボロになるでしょう。

 しかし,今すぐ辞めるのでは,あなたの社会的な信用が傷つきますので,よりよい会社への転職は難しいでしょう。そこで私のアドバイスは,発想の逆転です。今の環境を,「自分を鍛えるスパルタ教育」と考えて3年間我慢して勉強しましょう。仕事の成果が出ないのは仕方がないです。元々期待されていることが無理なのですから。

 従って,どれか現在の仕事にかかわる技術領域の中で,あなたが最も関心のある分野を徹底的に学習すべきです。ネットワーク,OS,開発技法,どれでも結構ですから知識を深めましょう。

 資格を取るのも重要です。資格試験に合格するためには広範な知識が必要になりますから,基本的な知識を深めるには好都合なのです。その上で,現在の仕事とも関係があり,自分も興味がある特定技術の知識を深めるのです。

 前回にも紹介しましたが,技術者のキャリアパスには,技術領域とその深さ(技術力)を軸にして3パターンほどあります(図1)。

図1●技術者のキャリアには3つのパターンがある
のタイトル
図1●技術者のキャリアには3つのパターンがある

 あなたの場合まだ若いのですから,まずは,“プチ・ゼネラリスト”で,かつ“プチ・スペシャリスト”を目指すべきです。できれば,本格的なスペシャリスト方向に進むべく努力すべきでしょう。この業界は,何かで秀でていなければよい仕事はないのです。楽しく仕事をするためには,自分で選んだ,自分が関心のある領域で,専門的な知識を深めるべきです。

 ただし,技術は座学だけでは身に付きません。現在の仕事と関係のある領域であれば,ある程度実戦の場があるはずですので,上司にお願いしてなるべく実戦経験を踏んでみましょう。

 教育に関しては,大抵の会社で教育費の補助があるはずですから,それを活用して外部のトレーニングを受けるべきです。補助がないか,あるいは不十分な場合は,自分の財布から払いましょう。これは自分への投資です。必ず将来数倍になって返ってくる,と思えば安いものです。

 新入社員の給料ではきついかもしれません。遊びたい盛りにそのような負担はできないと思うかもしれません。遊びをとるか将来への投資をとるか。それは,あなたの判断です。

奥井 規晶(おくい のりあき)
1959年神奈川県出身。84年に早稲田大学理工学部大学院修士課程修了。日本IBMでSEとして活躍後,ボストン コンサルティング グループに入社。戦略系コンサルタントとして事業/情報戦略,システム再構築,SCMなどのプロジェクトを多数経験。その後,アーサー・D・リトル(ジャパン)のディレクターおよび関連会社のシー・クエンシャル代表取締役を経て,2001年にベリングポイント(元KPMGコンサルティング)代表取締役に就任。2004年4月に独立。現在,インターフュージョンコンサルティング代表取締役会長。経済同友会会員,日本キューバ・シガー教育協会専務理事。