公衆無線LANは,携帯電話などと違ってサービスごとに提供エリアの差が大きい。しかも,一つのアクセス・ポイントのカバー範囲が狭いため,各社サービスの提供エリアは意外に重なっていない。自分の生活動線にアクセス・ポイントが存在するサービスを選ばないと,全く使い物にならないことになる。契約前に,事業者のWebサイトで,エリアが自分の生活動線に合うかどうか調べておこう。

エリア拡大で実用度増す無償サービス

 料金を重視すると,まず無償サービスが候補に挙がる(表1)。著名なのはFREESPOTとFON。これらの無償サービスもエリアの拡充で実用度が増している。FREESPOTは全国に約6200のアクセス・ポイントがあり,「渋谷や新宿の大型ビジョンの付近にアクセス・ポイントを設置する動きも進んでいる」(バッファロー ブロードバンドソリューションズ事業部の山下誠フリースポットプロジェクトチームリーダー)。

表1●無償の主な公衆無線LANサービス
表1●無償の主な公衆無線LANサービス

 住宅街が中心で商業エリアに弱いとされていたFONもライブドアとのローミング提携でJR山手線圏内を高い密度でカバーした。「英国ではBTとの提携でアクセス・ポイントが170万台以上に増えた。日本でも通信事業者と提携して対応エリアを広げていきたい」(フォン・ジャパンの藤本潤一CEO)と意気込む。

 ただ,無償サービスはどうしてもエリア展開の一貫性に欠ける。提供事業者がアクセス・ポイントの設置場所をコントロールしているわけではなく,草の根的にエリアを拡大しているためだ。これに対して有償のサービスは主要な駅や空港,店舗など商業エリアを中心にアクセス・ポイントを設置しており,「ここに行けば使える」というメドが立ちやすい。多くのユーザーは現実解として,有償サービスと無償サービスを補完的に使うことになる。

有償はNTT系とソフトバンク系に大別

 有償のサービスは,NTTグループ系とソフトバンクテレコムに大別できる。全国に広くアクセス・ポイントを設置しているのはこの2グループだけ(表2)。その他の事業者は大抵,これらのインフラを借りてサービスを提供している。例えばトリプレットゲートや日本通信はソフトバンクテレコムなどのインフラを使ってサービスを提供している。

表2●空港や駅,店舗の無線LANエリア化が進む
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表2●空港や駅,店舗の無線LANエリア化が進む

 エリアの拡大に特に力を入れているのはNTTグループである。NTTブロードバンドプラットフォームが各社共通のアクセス・ポイントを設置しており,その数は2008年4月末時点で6555。駅や空港,大手ホテルなどのカバー率は群を抜く。これに対してソフトバンクテレコムはJRグループ各社の駅や空港,マクドナルドなどの店舗にエリアを展開しているものの,NTTグループに比べるとカバー率はやや低い。エリア・カバー率重視であればNTTグループになる。ただ,「マクドナルドの利用が多いのでソフトバンクテレコム」といった選び方もある。

 さらに,それぞれの事業者のローミング提携先も確認する必要がある。できるだけ広い範囲で使いたいなら,ローミング先まで含めて生活動線に照らし合わせる方が良い。NTTコミュニケーションズの「ホットスポット」のように,海外ローミングに力を入れている事業者もある。ただ,ローミングに関しては標準(無償)で利用できるエリアと,追加料金が必要なエリアが分かれていることがあるので注意したい。

 逆に,日常の行動範囲が狭い場合,あるいは出張先で一時的に使いたいといった場合には,エリア限定や期間限定のサービスも候補になる。JR山手線圏内で十分ならライブドアのサービスが選択肢に入る。理経の「BizPortal」のように成田国際空港や新宿駅周辺,六本木ヒルズなどのスポットで1日や1週間単位で利用できるサービスもある。スポット提供のサービスは多くあり,東海旅客鉄道(JR東海)も東海道新幹線の東京-大阪間で乗客向けの車内無線LANサービスを2009年3月に開始する予定だ(写真1)。

写真1●2009年3月から東海道新幹線の車内で無線LANが利用可能に
写真1●2009年3月から東海道新幹線の車内で無線LANが利用可能に