今回はストレージ統合を取り上げる。ストレージ統合において最も重要なことは「全体最適」という点だ。これまで,ストレージを業務システムごとの部分最適で構築していた場合,全体最適にするという発想の転換が必要になる。もし,業務システムのアーキテクチャや社内プロセスが部分最適の考え方に基づいている場合,それらを全体最適にせねばならず,それはストレージ・システムを設計・構築する以上に困難なことである。

ストレージの全体最適

 各業務システム専用のストレージ装置がある場合(図1左),サーバーとストレージ装置間の接続がSCSIか,IPネットワークか,SANかということによらず,「ストレージ統合している」とは言わない。このような利用形態を取っている場合,そのストレージ装置にかかる構築費用や運用費用は,そのストレージ装置を利用する部門がすべて負担することになる(あるいは間接部門が負担して全社経費になる)。業務システムを設計する際,そのシステムの業務要件に応じてサイジングを行い,必要な分のストレージ装置を購入する。他の業務システムの要件や都合などには依存せず,そのシステムで閉じて部分最適を達成することになる。

図1●ストレージ統合/未統合の構成例
図1●ストレージ統合/未統合の構成例

 一方,図1右のようにストレージ統合を実現した環境では,ストレージ装置を複数のサーバーから利用し,全体最適を目指すことになる。この場合のメリットには次のようなものがある。

  • ストレージ装置を共有することで設備利用率が向上し,コストダウンが図れる
  • ストレージ装置を共有することで管理が一元化され,コストダウンが図れる
  • 高機能な大型ストレージを使用することが多く,その機能を活用できる
  • 可用性が高まる
  • 業務サーバーから見て,ストレージ領域の追加を短時間で実施できる
  • ストレージ装置を業務システムから切り離すことで,継続的な運用維持管理の改善を行うことが容易になる

 ストレージ統合はストレージの共有化という側面があるので,未使用領域を他の業務システムで利用することにより設備稼働率を向上させ,結果として設備コストの削減を図ることができる。また,ストレージ設備や管理ソフトなどのツール類が結果として統一されるので,管理コストの削減につながる。

 複数サーバーを接続して利用できるような高機能・大型のストレージを使用するケースが多いので,データ・レプリケーションやスナップショットを利用した「オフホスト・バックアップ」(サーバーのリソースを使わないで行うバックアップ)など,ストレージ装置の機能を活用した設計・運用を行うこともできる。

 こういった高機能・大型ストレージは一般的に高度な冗長化機能を持っており,パスの冗長化,インタフェースおよびディスク・コントローラの冗長化をはじめ,オンラインでのファームウエア・メンテナンスなど計画停止時にもアクセスを止めない機能を持ち,結果としてストレージの可用性の向上につながる。

 未使用領域はどの業務システムからでも利用可能になるので,領域の拡張が必要となったとき,未使用領域をかき集めて拡張することもできなくはない。かき集めた未使用領域を永続的に使用することは運用面での課題を抱えるので,一時的な利用とし,その後ストレージの増設など必要な準備が整った段階で,より運用が簡素化するような構成に(ストレージの停止を行わず)移行する。そうしたことも可能になる。

 最後に,ストレージ部分がサーバーやアプリケーションから切り出された「ストレージ・インフラ」として管理・運用されることになるので,情報システム部門主導で改善活動を行っていくことができる。これは,ストレージをサービスとして利用部門に提供する,という「ITのサービス化(IT as a Service)」を行うということである。