当記事のタイトル(訳注:原題の「Hasta La Vista, Windows XP」はスペイン語で「さようなら」という意味でVistaにかけている)は筆者以外にも思い付いただろうが,そんなことはどうでもよい。2008年6月30日は,いわば逝ってしまう旧友を追悼する日であった。延命続きだった「Windows XP」の軌跡をざっくばらんにたどっても構わないだろう。

 ただ,Windows XPに残されたライフサイクルの子細を書き連ねて退屈させたりはしない。そうした事柄は,すでにまとめてある(関連記事:Windows XPを取り巻くうわさに注意――Windows XPの通常販売は6月末まで,サポートは2014年4月まで)。当記事では,Windows XPの不名誉な初期を振り返ることにスペースを割いてみよう。「Windows Vista」の発売初年度と興味深く比較できるはずだ。どういうわけかWindows XPに対しては,見落としの多い一方的な思い出しか持っていない人が多い。実はよい思い出ばかりではなかった。

 最初に,Windows XPの累積販売数は数億本に達し,最もよく売れたWindowsであることは間違いない。もっとも,Windows XPの販売が必要以上に長い期間継続されたからこそ,これだけの成功を収められた。Windows XPが当初の計画通り2004年に後継Windowsと置き換えられていたら,忘却の彼方に消え去り,歴史に埋もれた製品の一つになっていただろう。ところが,米Microsoftは2004年,「Windows XP Service Pack 2(SP2)」と呼ぶ無料版リリースで延命したのだ。

 SP2リリースに先立つ2001年10月,Windows XPが産声を上げた。筆者は,その月に掲載した記事「WinInfo Short Takes:Windows XP Launch Special Edition」で,Microsoftの仕掛けた「真夜中の熱狂」イベントは期待はずれで「真夜中でも熱狂でもない」と評した。こうしたイベントは,「退屈で長すぎる」Windows XP発売イベントの後に開催されたのだ。Microsoftグループ副社長のJim Allchin氏でさえも,Windows XPの発売時点で先行きを楽観視しており,「取り立てて騒ぎ立てる製品ではない」と述べた。発売イベントのステージに現れた米Gateway最高経営責任者(CEO)のTed Waite氏は,「Windows XPは当社の売り上げに全く影響を与えない」と話した。

 Windows XP発売の直後,Microsoftは独占禁止法(独禁法)訴訟で米国政府と和解した。筆者は,その当時の記事「An Analysis and Opinion of the Microsoft Antitrust Settlement」で,「この和解は,Microsoftの違法行為を罰することも,今後同じような行為をさせないようにすることも,全く無理だろう」と書いた。和解の影響でMicrosoftが変えたのは,OSに対する製品のバンドル方法だけだ。そして,この変更が,好むと好まざるとにかかわらず,オンライン・アプリケーション・サービス「Windows Live」を生み出した。

リリース直後に時期バージョンの計画を発表

 Windows XPが完成すると,Microsoftの意識はWindows XP用SP1に向かった(これに対し,Windows Vistaのときは「SP1など存在しない」という態度をとっていた)。そのころ,Allchin氏は次期Windows「Longhorn」(開発コード名)を発表し,2002年にベータ版,2003年に製品版をリリースするとした(「With XP Complete, Microsoft Focuses on SP1」)。覚えているかもしれないが,このリリース計画は愉快な結果となった。Windows Vistaを発売した時点で,Microsoftは次期Windows「Windows 7」(開発コード名)に触れることを避けた。MicrosoftはWindows XPで経験を積み,リリース計画に関する戦略を変えたのだ

 Windows XPは,ユーザーを攻撃にさらしてしまうUPnPの深刻なセキュリティ・ホールという,同OS初の重大なぜい弱性問題をなんとか切り抜けた。Microsoftは,同社製品のセキュリティ・ホールに関する情報を広めないようさまざまなWebサイトに依頼し,この問題に対処した。そう,真剣に依頼したのだ(「Top Stories of 2001, #1:Security and Privacy Problems Dog Microsoft」)。

 Allchin氏は2001年12月,Windows XPの販売が「計画通り」で,会社として「非常に満足」と述べた(「Allchin:Windows XP Sales On Track」)。ただし,アナリストと小売業者はWindows XPはそれ以前の消費者向け製品「Windows 9x」より売れ行きが伸びない,としていた。この時点で,小売店におけるWindows XPの販売数は,同時期の「Windows 98」の水準に達していなかった。

 2001年の終わりになると,専門家たちはWindows XPを徹底的に批判する潮時と考えた。これと同じような状況は,後のWindows Vistaでも繰り返されている。もっとも,両者は二つの相違がある。ほとんどのユーザーがオンライン環境にある現在,状況はWindows Vistaの方が悪く見える。Windows Vistaが発売された2007年,ユーザーは問題に巻き込まれたと感じるだろうが,深刻度はWindows XPに関する問題の方がはるかに大きかった。筆者は,OSそのものの欠陥よりも,プリンタ・ドライバが足りないという問題を重視してしまう。これは変な考えだろうか(「FBI Issues Windows XP Warning, Pundits Jump on MS」)。