表1●省エネ法の4本柱(太字は主な改正対象)
表1●省エネ法の4本柱(太字は主な改正対象)

 2度にわたる石油ショックを経て誕生した省エネ法。工場など大量のエネルギーを使う事業場に省エネを義務づける。エネルギー使用の増加が顕著な業務・家庭への対策が強化される。

 「エネルギーの使用の合理化に関する法律(省エネ法)」は、第2次石油ショックを乗り越えた翌年、1979年に制定された。日本は原油高騰と産油国からの供給制限を通じ、エネルギー安全保障の重要性を学んだ。エネルギー自給率の低い日本にとって、安全保障を確保するための手段の1つが、省エネだった。以来、90年代に顕在化し始めた地球温暖化問題などへの対応も含め、これまでに4度の改正を重ねている。

 2005年に改正された現行の省エネ法では、一定規模以上の工場に対し、エネルギー使用状況の報告が義務づけられている。加えて、企業の物流や業務部門でのエネルギー使用量が著しく伸びていることを背景に、一定規模以上の貨物の輸送事業者と荷主、業務用ビルにまで報告の義務づけの網を広げてきた。

 ただ、エネルギー使用量が増えているのは企業活動だけではない。90年代後半からのデジタル家電類の普及で、家庭での増加も顕著だ。そこで、自動車やエアコンなどのエネルギー使用量の大きな機器類を対象に、「トップランナー」制度が導入されている。商品化されている中で最もエネルギー使用効率の高い製品(トップランナー)を基準に、省エネ性の高い製品開発をメーカーに求めるものだ。これまでに、液晶・プラズマテレビなど21分野に適用されている。

 これに加え、家庭などへのもう1つの対策として、2000m2以上のマンションなどの住宅や建築物に対し、新築や改築時に省エネ性能の高い設備や建材を活用するなどの省エネ計画の策定と、届け出を求めている。

 そして今年3月、京都議定書の第1約束期間の開始を前に、さらに対策を強化しようと5度目の改正法案が提出されている。今回は、今国会で成立する見通しの2008年改正法案の要点を解説する。

業務・家庭への対策を強化

 今回の改正のポイントは大きく2つある。まず、(1)2000m2以上の住宅・建築物に義務づけていた省エネ措置を2009年度から強化し、より床面積の狭い中規模の住宅・建築物にまで求めていく。そして、(2)従来は工場や業務用ビルなどの「事業場」ごとに求めていたエネルギー使用量の報告義務の対象を、 2009年度から一定規模以上のエネルギーを使う企業と、コンビニエンスストアなどのフランチャイズチェーンにまで広げる。いずれも、90年度比でエネルギー使用量が約4割増えた業務部門や家庭部門への対策強化が目的だ。

 (1)については、新築・改築の際の届け出義務の履行をより強く担保するため、罰則の強化を打ち出した(表2)。加えて2000m2未満の住宅・建築物にも、届け出を義務づける。義務の対象になる基準面積は、改正法案の成立から半年以降、遅くとも2008年度中には政令で決まる見通しだが、 300~500m2程度が基準になりそうだ。

表2●住宅・建築に求められる取り組み
表2●住宅・建築に求められる取り組み
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 また、建築物の販売・賃貸事業者には、住宅や建築物の省エネ性能の表示を義務づける。消費者に対する省エネ性能の「見える化」を促すことで、一層の省エネが進むことを期待している。