英BTグループ テクノロジー&イノベーション
日本・韓国担当副社長
ヨン・キム 英BTグループ テクノロジー&イノベーション
日本・韓国担当副社長
ヨン・キム

 英国の放送局BBCが2007年12月に開始した「iPlayer」というサービスが英国で大ヒットしている。iPlayerは,過去1週間に放映したテレビ番組をパソコン上で視聴できる,いわゆる“見逃し視聴”サービスだ。開始以来わずか3カ月で,4200万の視聴者を獲得している。

 欧州は,このようなIPTVによるテレビの革命において世界をリードしている。フランスではIPTVの視聴者が400万世帯を超えるなど,新しいコンテンツの視聴方法が広く浸透している。英国も英BT,英ティスカリ,英バージン・メディア,英スカイの4事業者がIPTVサービスを始めている。

 BBCのiPlayerの視聴報告を見ると,その急拡大ぶりがよく分かる。サービス開始後から2008年4月まで約7500万の番組コンテンツにアクセスがあり,月平均で20%も伸びているという。iPlayerが英国内のインターネット・トラフィックの約5%を占めているという報告もある。

 それに伴い,BBCとネットワーク・インフラを提供するプロバイダ(ISP)間の対立も表面化してきた。対立のきっかけは,元々はISPであるティスカリの企画部門チーフ,サイモン・ギュンター氏が「iPlayerを続けるならBBCもネットワークの拡張コストを負担すべき」と発言したことが発端である。これに対して,BBCのフューチャー・メディア&テクノロジー担当ディレクターであるアシュレイ・ハイフィールド氏は「そのコストはISP側がで持つのが筋である」と応じている。

 英国の規制当局である「Ofcom」は,iPlayerと同様のサービスを提供するのに必要なネットワークの拡張コストは8億3000万ポンド(約 1660億円)に上ると試算した。問題は誰がその拡張コストを負担すべきかという点だ。OfcomはBBCの意見に賛成し,コンテンツ・プロバイダはネットワーク拡張のコストを負担する必要はないという見解を示している。

IPTVでコンテンツ視聴が変わる

 事業者間の対立を呼び起こすほどヒットしているiPlayerだが,iPlayerのようなサービスの登場によって,私たちのコンテンツの視聴方法が大きな変化を遂げている点も興味深い。

 BBCのハイフィールド氏は「BBCのiPlayerの利用者は,一日当たり約30分も視聴に費している。これは,英国におけるテレビ番組の見方が,いかに革命的に変化しているのかを示している」と語る。

 これまでのように放送スケジュールに従って番組を視聴してきた形と比べると,私たちはイノベーティブな時代に突入しつつあることを実感できるだろう。私たちのテレビの見方は一変した。放送スケジュールに合わせて番組を見るのではなく,私たちの生活スタイルやスケジュールに,番組の方が合わせられるようになったのだ。

 さらに重要なことは,番組を呼び出す行為は双方向性を生み出し,コンテンツを一方的に送信するだけの従来型サービスとは異なる展開が考えられる。インターネットの活用によって,コンテンツの可能性はさらに広がるだろう。

ヨン・キム(Yung Kim)
英BTグループ テクノロジー&イノベーション
日本・韓国担当副社長
 英国では,住宅価格がこの4月に2.4%も下落したという報道があった。これは1993年以来,最大の下落率である。英国経済は,減速かゼロ成長の時代に入ったと言える。それに伴って,今後は携帯電話に支払う金額も下がるだろう。英国で携帯電話のARPUの伸びが減速することは,これが初めてである。