2008年5月21日に都内で開催された「行財政改革シンポジウム2008」より、総務省自治財政局財務調査課長青木信之氏による基調講演「地方公共団体財政健全化法と公会計の整備推進」の講演概要をお届けする。(構成:清浦秀人=フリーライター、写真:垂井 良夫)
総務省自治財政局財務調査課長 青木信之氏 |
地方公共団体の財政の健全化に関する法律(健全化法)が公布され、2007年度決算の数値から、4つの指標――実質赤字比率、連結実質赤字比率、実質公債費比率、将来負担比率について算定をし、監査院の審査に付して議会に報告して、今年の秋に公表するということになりました。今回は、健全化法の指標と公会計との関係をどう捉えるかということを中心にお話をしたいと思います。
健全化法における健全化判断比率のポイントは、連結実質赤字比率、そして将来負担比率というもので全体を捉えているということです。フローの赤字は連結実質赤字比率ですべて捉えています。そして将来負担比率も見ることで、ストックベースの将来負担する法的責任のあるものも全部捉えています。従って、どこにも抜け道がなく、そのことが財政運営の透明性を高めることになります。
もう一つ重要なのは、フローの赤字は当該年度の成績を示しているものではないということです。今解消しなければならない赤字はいくらかということを示しています。ですから、公営企業に関して資金不足比率を出す時の資金不足額は、後で解消可能なものは控除するということになっています。従って、逆に「一年間の成績表」もあった方がよいという意味で、周辺情報として公会計の情報が大事になってくるのです。
また、将来負担比率では、損失補償をしていないような第三セクターに関しては反映されないわけですが、住民から見ると「そうした第三セクターも含めた全体の状況がどうなっているのか?」ということが非常に興味があるところとなります。では、そうしたことはどこで分かるかというと、連結の財務諸表を見て分かるということになります。
このように、健全化法上のいろいろな取り組みと関連して、周辺情報を公会計で補うことは、実は極めて意味があることであり、重要になってくるというわけです。
売却可能な資産の情報を適切に提供する
販売用資産の時価評価は、将来負担比率の算定上どうしても必要な作業となります。販売用土地に関しては、全て時価で評価いただくことになっていますが、この評価ルールに関しては、公会計の整備においても同様に行うことをお願いしています。この時、売却用資産ではないけれどもそれが可能で「使われてもいないから何とかしたい」というものについても、一定の評価をするのはごく自然なことではないかと思います。
現在、市町村の財産の台帳等はほとんど電子化されていません。仮に売却可能な資産をきちんと把握した上でそれをWebサイトに載せておけば、「売却可能資産」というキーワードと、例えば市の名前などのキーワードとで検索をすると、必要な情報を一覧できるようになるわけです。資産を購入したい側は、どこにそうした資産があるのかを把握できることに非常に大きなメリットを感じるでしょう。地方公共団体にとっても、売却可能な資産について、その情報をいかに提供していくかということは、今後の財政運営において非常に重要になってくると言えると思います。
健全化法の4つの指標等については、法律および政令において、インターネット上公表するということが義務付けられています。公会計の情報も含めて、ネットでどのように提供していくのか。地方公共団体がこれから考えていくべき一つのポイントとなるのではないでしょうか。
編集部注:総務省は6月3日「地方公会計の整備促進に関するワーキンググループ」を発足、5日に第1回目の会合を行った。ワーキンググループでは、この講演の内容とも関連する「財務書類整備促進のための具体策」「地方公共団体財政健全化法との整合性」「資産評価事務」「連結財務諸表」「分析・活用手法」といったテーマについて検討を行っていく。
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