文:佐賀県 統括本部 情報・業務改革課

 佐賀県では、全庁的な業務である許認可等の台帳管理業務について、「佐賀県台帳管理システム」を株式会社ジムコ(本社・佐賀市)と共同開発・導入しました。関係者が情報を容易に共有でき、かつ、利用者による様式変更が簡便であることが特徴です。2008年4月には、同社とシステムの利用許諾契約(製品の販売)を締結しました。その契約内容は、ジムコが台帳管理システムを販売するごとに、佐賀県が同社から著作物の利用に係る許諾料(販売価格の5%)を受け取るというものです。

システムの利用許諾料という歳入確保モデル

 佐賀県では「歳入戦略グループ」という組織を設けるなど、歳入確保に向けた取り組みに力を入れています。2008年3月に「佐賀県台帳管理システムに関するプログラムの著作物の利用に関する取扱要領」を策定し、その取り扱いなどを明確にしました。

図1
図1●「取扱要領」は佐賀県のサイトで公開されている

 開発ベンダーでもあるジムコと佐賀県との間の知的財産権の切り分け(図2)については、「完全追記型記録管理」を特許申請(当時)していたジムコとシステム開発に係る契約を締結する時点で権利関係のあり方について協議を行い、両者合意の上で共同開発を行いました。同社との利用許諾契約については、開発を終えた後に改めて結んだということになります。マスコットキャラクターなどの著作権の使用許諾料を設定している自治体は多いと思いますが、基幹的ソフトウエアについて、その著作権を持つだけでなく、利用許諾料を設定しているケースは少ないのではないでしょうか。

図2
図2●「台帳管理システム」における知的財産権の整理

 2008年5月には、ジムコからリース会社を通じて福岡県庁にこのシステムが導入(リース契約)されました。現在、他の自治体からも問い合わせをいただいています。今回の共同開発では、行政が地元企業と共同で製品やシステムを開発し、その開発過程で行政向けの商品としての付加価値を高めていくとともに、行政が知的財産権で収入を上げることができました。こうしたモデルは、行政の歳入確保の手法として今後注目が高まるかもしれません。

「プログラムの著作物の利用に関する取扱要領」の概要

 「佐賀県台帳管理システムに関するプログラムの著作物の利用に関する取扱要領」は、情報・業務改革課が中心となり、知的財産を所管する用度管財課と2007年10月から約半年ほど協議を重ねて策定したものです。

 同要領では、法令や公序良俗に反したり、共同開発した株式会社ジムコのシステムに係る著作権を侵害したりするおそれがある場合などを除き、利用許諾契約を締結した企業等に対してプログラムの著作物の利用を認めることとしています。

 利用許諾の対象については、企業等を想定し、一般的な条件以外特に制限は設けておらず、許諾期間も2年間以内(更新可)としています。

 取扱要領を作成するうえで苦慮したのが利用許諾料の設定でしたが、

  1. 著作物を利用した製品を他者へ販売する場合
  2. 著作物を自己の用に供するために利用する場合

の2つの場合に分け、それぞれ「製品の販売価格」「著作物の残存価格」の5%を利用許諾料として定めました。

 また、利用許諾料については、県内の地方自治体や公共的な団体が自ら利用する場合は免除することができるように定め、便宜を図っています。

 現在の課題としては、利用許諾を得て販売される製品価格のどの部分が利用許諾料の対象となるのかという問題があります。システムという著作物の性質上、常に同じものが同じ形態で販売されるわけではなく、顧客のニーズに応じたサービスが付加されケースバイケースの価格が設定(値引き等)される場合が考えられ、それに応じて利用許諾料の対象範囲も影響を受けざるを得ません。現在、この点について利用許諾料の対象から運搬費等の間接経費は除外することなど対象範囲を定めてはいますが、実際の商取引を踏まえ販売者と協議・検討などを行っていきたいと思います。