Webブラウザの多くが世代交代の時期を迎えている。例えば米Mozillaは6月,Firefox 3を公開した。ノルウェーOpera Softwareも同月,新バージョンOpera 9.5をリリース。米マイクロソフトは,Internet Explorer(IE)7の普及を促す一方で,次期版となるIE 8のベータ版を3月に公開した。さらに米アップルが3月,Windows用のSafari 3.1を投入。第2次ブラウザ戦争に加わった。

 単にブラウザの種類が増えているだけではない。機能面に目を向けると,どのベンダーもWebアプリケーションの使い勝手を高める仕組みを実装しようとしている。サービス事業者などにとっては,これまでと一味違う便利なWebアプリケーションを提供できる環境が整う。

3通りのアプローチで使い勝手強化

 具体的に見てみよう。各社が最新版への実装を進めている機能は3種類に大別できる。(1)ネットワークがつながっていなくても使える「オフライン」機能,(2)複数の情報やWebアプリケーションを自在に連携させて使えるようにする機能,(3)ブラウザでのアクセス履歴などを活用して利便性を高めた Webサイト検索機能──である(図1)。このうち(1)と(2)は,個人だけでなく,Webアプリケーションの業務利用でも役立ちそうだ。

図1●最新のWebブラウザにはWebの使い方やWebサイトのサービス内容を変える仕組みの数々が盛り込まれた
図1●最新のWebブラウザにはWebの使い方やWebサイトのサービス内容を変える仕組みの数々が盛り込まれた

 オフライン機能は,ブラウザにWebアプリケーションとデータをキャッシュし,Webサーバーに接続しているときと同じ使い勝手を実現するものである。ブラウザのエンジンが軽量のデータベースを持ち,ここにアプリケーションやデータを格納する。こうすることで,回線が切れた状態でも作業を続けられる。

 複数のサイトに分散しているアプリケーションや情報を連携させる機能は,マッシュアップに近い。例えば,あるサイトのページ内に記載された住所を基に,ユーザーが単純な操作で別のサイトから地図情報をダウンロードして表示するといった具合だ。ユーザーから見れば,いちいち別のWebページを開いてデータをコピーする手間が省ける。

 3番目のWebサイト検索機能は,ブラウジング履歴のデータからアクセス先を自動検索するもの。URLやサイト名を忘れても,過去にアクセスしたサイトの中から,アドレスバーに入力したキーワードを含むサイトを一覧表示できる。

 今はまだ,実装する機能やその実現方法はベンダーによって異なっている。日本ではIEが7~8割というようにブラウザのシェアに大きな差がある現状では,IE以外のブラウザが備える多くの機能はユーザーには無関係と感じるかもしれない。それでも,ユーザビリティを高めようと,ベンダーは新機能をキャッチアップする。いくつかは近い将来,ブラウザの「当たり前」の機能になるはずだ。