「グリーンIT」というキーワードで,省電力サーバーやデータセンターの省電力対策に注目が集まっている。だが,サーバー内部のメモリーやハードディスク・ドライブ(HDD)の構成までは,あまり意識することは少ないのではないだろうか。今回,メモリーやHDDの構成を変更しただけで2割の節電効果が得られた。検証を実施したライブドアの伊勢さんに報告してもらう。
ITシステムの省電力対策を意味する「グリーンIT」というキーワードを最近,よく見かけるようになった。実際,2007年以降,消費電力を抑えたシステムをユーザーに提案することも活発になっている。ITの現場でも,省電力への関心が高まってきているといえよう。
今回は,現在入手可能なIAサーバーを使って「同じ容量のメモリーとHDDを部品構成を変えて搭載すると,サーバー全体の消費電力に違いが出るか」を検証してみる。
サーバーに搭載するメモリーやHDDの全体の容量が同じでも,メモリーやHDDの一つ当たりの容量や個数には,様々な組み合わせがある。今回は,メモリーやHDDといった部品構成のバリエーションで,消費電力がどれくらい違うのか,グリーンITを実現するために,部品構成がどう影響するのかを検証する。
京都議定書の目標達成に1.1%貢献
図1は,サーバー上のトータル容量が「メモリー4Gバイト,HDD約147Gバイト」となる二つの構成で,消費電力の違いを調べた結果だ。メモリーと HDDの個数が最大となる「構成A」と,最小となる「構成B」とを比べた結果,サーバーに負荷をかけたときのサーバー全体の消費電力は,構成Bの方が 46.8W低くなることが分かった。同一サーバー上で,同じ容量のメモリーとHDDを搭載していても,およそ2割もの節電が可能なのである。
仮に,首都圏のデータセンターで稼働する全サーバーで,メモリーとHDDの構成を見直したとしたら,どれくらいの効果があるだろうか。
野村総合研究所(NRI)は,2010年の首都圏のデータセンターの利用面積を,57万m2と予測している(2006年5月に発表)。この値を基に1 ラック当たりの平均床面積を4m2,1ラックに20台の1Uサーバーを格納するとして試算してみるとサーバーの台数は285万台。図1の検証結果の 46.8Wから,年間で11億7000kWh削減できる計算になる。
さらに全国のデータセンターで実施したと仮定してみよう。NRIの予測では2010年,全国のデータセンターの利用面積は74万m2。同じように試算すると,サーバーの台数は370万台。年間15億2000万kWh削減できることになる。この値は,二酸化炭素(CO2)排出量の削減効果で言うと,84万2000トンに相当する。CO2の排出量(トン)は,電力量(kWh)に排出係数0.000555(経済産業省と環境省が省令で定めた値)を乗じることで算出できる。
このCO2削減効果はかなり大きいといえる。各国の温室効果ガスの削減目標を取り決めた「京都議定書」で,日本が掲げる削減目標の1.1%に相当するからだ。日本は2012年までに,1990年の総排出量(CO2換算で12億6000万トン)の6%(7600万トン)を削減する目標を掲げている。サーバーの部品構成を見直すだけで,目標達成に少なからず貢献できるのだ。
システムの現場では,社内にある比較的小容量のメモリーをかき集めて利用したり,ほかのサーバーで利用していた容量の小さいHDDを取っておき,新しいサーバーに流用したりすることがあるかもしれない。これらは,調達コストの削減には有効だろう。
しかし,グリーンITという観点でみると話は別だ。消費電力の削減を無視したサーバーの設計や調達は,今後は疑問視されることになる。
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