プライムベンダーの座を射止める絶好の機会だ。営業部隊は休日返上で顧客を訪問。そこで出された技術的な課題については、社内のエンジニアの協力を仰ぐなど総力戦で臨んだ。

 「コンペを開始した当初、東芝ソリューションは本命ではなかった」。東武百貨店の情報システム部長を務める葛馬正記は本音を打ち明ける。

 東芝ソリューション(TSOL)は1998年から、東武百貨店の業務システムの一部を担当。東武百貨店を担当するTSOLのソリューション営業第一事業部流通システム営業第一担当プランナーである町田敏男は、基幹システム再構築プランを耳にした2005年10月、コンペへの参加を葛馬に直訴した。「無視はできない」と葛馬はTSOLにも声をかけることにした。

 TSOLは“ダークホース”的な存在だったにもかかわらず、営業部隊がエンジニアを巻き込むなど総力戦で臨み、基幹システムを構成する九つのサブシステムのうち六つの再構築案件を約8億円(本誌推定)で獲得した(図1)。

図1●東武百貨店が再構築した基幹システムの概要
図1●東武百貨店が再構築した基幹システムの概要
九つあるサブシステムのうち六つの再構築を東芝ソリューションが担当した
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 東武百貨店が基幹システムを見直した理由は、システムの保守効率を高めたり、運用費を削減したりするため。さらに葛馬は「ビジネス変化に柔軟に対応できるシステムインフラを整備したかった」と、もう一つの狙いを語る。

 IBMメインフレーム(S/390)で動かしている業務アプリケーションは、20年以上機能追加・変更を繰り返し、COBOLプログラムが“スパゲティ状態”。保守に多大な手間とコストがかかっていた。メインフレームベースのシステムにかかる運用費も高止まりしていたという。