日本システムウエア(NSW)が参加したECサイト構築商談。顧客はRFPだけを公表し、コンペ参加企業のガチンコ勝負を期待した。NSWは、RFPの“独自解釈”に勝負をかけた。

 「年末のクリスマス商戦には、絶対に間に合わせたい。厳しい納期だが、NSWさんも提案してはどうか」。NSWのネットビジネス事業本部営業統括部主任の市川智央は、訪問先でキャッチした新規案件の情報に胸を高鳴らせた。2007年5月初めのことだ。

 市川が訪れたのは、最近取引が始まったNHKの番組制作子会社であるNHKエンタープライズ(NEP)。応対した事業本部営業センターのマネージャー、澤田隆司らは打ち合わせが済むと、自社で運営するEC(電子商取引)サイトの刷新計画を市川に打ち明けた。ECサイト構築こそ市川の部署が得意とする分野。元請けとしてNEPに食い込む、またとない好機だ。

上流コンサルが顧客側につく

 NEPが運営する「NHKエンタープライズ ファミリー倶楽部」は、主にNHKが放送した番組のDVDソフトや番組に登場するキャラクターグッズを直販しているECサイトである。ネット事業の勃興期である1998年に発足し、現在の年商は20億円に迫る。

 2007年初め、NEPはそのサイトを全面刷新することにした。手組みで開発された現行システムは、性能向上や維持・管理が限界に来ていたからだ。

 この9年間で、ECビジネスを巡る風景は全く様変わりした。澤田らはネット事業を抜本的に刷新することも視野に、戦略立案の上流コンサルティングを導入することにした。コンペの結果、博報堂などが出資するスパイスボックス(東京・渋谷)を2007年3月に選定。さっそく同社と共同で、ECサイトの戦略や新システムのRFP(提案依頼書)作りを急いだ。

 ファミリー倶楽部の商いは年末年始にピークを迎える。システムを刷新するなら、2007年11月末の新装開店は絶対に譲れなかった。