データウエアハウス分野の製品力には自信がある。しかし利用部門主導の商談だけに、技術的な優位性だけでは訴求しない。「価格競争になれば失注する」との危機感を抱き提案を練る。

 「さて、どこに的を絞って提案したものだろうか」。日本NCRのテラデータ事業本部金融ソリューション第二事業部第二営業部営業課長代理の小池善太は、頭を抱えた。DCキャッシュワンから、新しいデータウエアハウス・システムに関するRFP(提案依頼書)を受け取った2006年1月上旬のことだ。DC キャッシュワンのRFPに書かれていた内容は大まかだったため、小池は提案書の作成に苦慮していたのだ。

急ぎ仕上げたRFPを4社に提出

 DCキャッシュワンが新しいデータウエアハウス・システムを構築したのは、商品・サービスの企画力を高めるため。それには借り入れから入金までの顧客の行動履歴や、問い合わせ状況などを分析する必要があった。同社は2002年の会社設立当時にデータ分析システムを作ったものの、利用できるデータが限られていたり、分析結果を入手するまでに時間がかかったりするといった問題を抱えていたのだ。

 「従来のシステムは次第に活用されなくなり、担当者の経験とカンで営業しているような状況だった」。DCキャッシュワンの経営企画部次長でプロジェクトリーダーを務めた中静隆は打ち明ける。

 「非対面営業が基本の当社が、競争力のある商品やサービスを生み出すには、徹底したデータベースマーケティングを実践するしかない」。こうした判断から、新たなシステムを作ることを2005年12月に決めた。ライバルもシステム強化に余念がない中、システム構築に時間をかけている余裕はない。中静は 12月からRFPの作成に取り掛かった。

 システム担当者でない中静は、システム案件に関するRFPを作成した経験があったわけではない。時間をかけて入念に作るゆとりもなかった。DCキャッシュワンは2006年1月上旬、早急に仕上げたRFPをITベンダー4社に送付した。DCキャッシュワンに出資する三菱東京UFJ銀行と付き合いのあった日本NCRと、従来システムを担当した三菱電機インフォメーションシステムズ(MDIS)、それに人脈を介して知った中堅SIer、インドの大手SIer だ。