LTEはW-CDMAの後継規格とはいえ,「3.9G」という呼称が表す通り,3Gよりも4Gに近い技術を採用している。4Gの技術を先取りして伝送方式を変更しているほか,コア・ネットワークも次世代への移行を前提としてオールIP化しているからだ。このためLTEは,W-CDMAやHSDPAと後方互換性がない。

帯域幅拡大と変調方式,MIMOが肝

 LTEは,HSDPA/HSUPA(HSPA)の理論上の下り最大速度である14.4Mビット/秒に対して,下り最大326.4Mビット/秒と大幅に伝送速度が高速化する。LTEとHSPAの技術仕様を比較した場合,(1)利用する帯域幅,(2)データ変調方式,(3)複数のアンテナを使って同時に複数のデータを送受信するMIMOのサポートの有無,の3点に違いがある(表1)。

表1●LTEとHSPAの違い
変調方式やMIMOの有無,利用できる周波数幅に違いがある。これらの違いが速度を大幅に向上するポイントとなっている。
[画像のクリックで拡大表示]
表1●LTEとHSPAの違い

 まず(1)の利用する帯域幅はLTEでは最大で20MHz幅までサポート。HSPAは5MHz幅である。帯域幅が広くなればなるほど伝送速度はほぼ比例して向上する。帯域幅の拡大によって,最大約4倍の高速化が見込める。

 (2)について,LTEはHSPAではサポートしていないデータ変調方式に新たに対応。送信ビット数を従来の1.5倍に拡大した。具体的には16値(4ビット)の信号を一度に伝送する16QAMという変調方式に加え,一度に64値(6ビット)の信号を送れる64QAMという変調方式を新たにサポート。4ビットから6ビットへと拡大したため,1.5倍の高速化を実現した。

 (3)のMIMOに関しては,LTEでは最大で送受信アンテナを4本ずつ利用する4×4MIMOに対応する。MIMOは複数のアンテナに対して同時に複数のデータを送受信する。アンテナが一本の場合と比べて4倍の伝送速度となる。

 これら三つの技術の掛け合わせによって,LTEはHSPAの約24倍の最大伝送速度を実現できる図1)。

図1●帯域幅の拡大,データ変調方式の多値化,MIMOによって速度を向上
図1●帯域幅の拡大,データ変調方式の多値化,MIMOによって速度を向上
これらの技術を組み合わせてLTEは,最大でHSPAの約24倍の速度を実現する。
[画像のクリックで拡大表示]