第3回では正しい概念データモデリングの方法について解説しました。第4回では,第3回で登場したD社の事例をもとに,概念データモデリングの作業内容を具体的に解説したいと思います。これまでより長い説明になりますが,ぜひ最後までついてきてください。
まず業務を理解する
概念データモデルの作成の最初のステップは,業務を理解することです。しかし,業務の理解を目的とするとき,概念データモデルでは表現する内容が細かすぎます。分析対象である帳票やエンティティを,業務理解の最初の段階で特定することは困難です。
そこで,まずはプロジェクト(構築するシステム)が対象とする業務について,「業務説明書」を作成します。
業務説明書 |
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営業部 ●3月に2年分の販売計画を立案する。 生産管理課 ●月に2回,3カ月先までの月間生産計画を作成する。 ●月間生産計画の翌月,2カ月先,3カ月先分は,それぞれ顧客からの確定注文,顧客からの発注予定,営業の作成する販売計画をもとに作成する。 ●月間生産計画にあわせて月に2回,1カ月先までの製造指図を出す。 ●月間生産計画にあわせて材料を発注する。 製造部 ●毎週水曜日ごろ,グループリーダーが翌週の作業計画を作成する。 ●担当工程の作業が完了したら完了報告をする。 品質管理課 ●品質検査工程の作業が完了したら完了報告をする。 ●不良品が発生したら不良原因を調査し,調査結果を記録する。 |
続いて,図1のように業務説明書をもとに業務モデルを作成します。
図1●D社の業務モデルの例 [画像のクリックで拡大表示] |
業務モデルでは,組織内の業務が実行される順序,業務遂行の担当部署(担当者),関連する外部の関係者(組織や人,システムなど)を整理します。このとき,業務の観点で正しそうな業務の流れになっているかを確認します。
例えば,「製造指図」がないにもかかわらず,「作業完了報告」が行われることはなさそうです。なぜなら,作業を行う現場が思いつきで加工作業を勝手に進めることは通常はないと考えられるからです。
このような業務の整理をするために,業務モデルの各プロセスの内容(何をどのように行うのか)を整理します。プロセスで担当部署(担当者)がどのような業務を行うのかを処理内容としてまとめます。
下記は図1の2番目のプロセスである「月間生産計画の作成」について整理した結果です。
業務(データ発生源) | 帳票 | 処理内容 |
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月間生産計画の作成 |   | 月に2回,3カ月分の月間生産計画を作成する。翌月分は,顧客からの確定注文をもとにする。2カ月先の分は,顧客からの発注予定をもとにする。3カ月先の分は,販売計画をもとにする。発行済みの製造指図を考慮した月間生産計画とする |
ここで注意が必要なのは,「プログラムの処理を記述しない」ということです。次のようにプログラム処理を記述すると,どのような業務を行っているのか,業務として正しいといえるのか,といった業務の観点での整理が難しくなります。
業務(データ発生源) | 帳票 | 処理内容 |
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月間生産計画の作成 |   | 製造指図ファイルから有効な製造指図を取得する。月間生産計画(翌月分)に顧客からの確定注文の個数をセットする。月間生産計画(2カ月先分)に顧客からの注文予定の個数をセットする。月間生産計画(3カ月先分)に販売計画の該当月の個数をセットする。月間生産計画ファイルに新規データを記録する |