企業のExcel活用が危機を迎えている。現場主導で作成・利用されてきた“部分最適のExcelレガシー”の維持が難しくなり、内部統制や情報漏洩の観点から継続利用が危ぶまれている。対応策と本連載のまとめを述べる。

 Excelが本格的に利用され始めて十数年たち、ビジネスでパソコンを使うほとんどの人が利用するツールとなった。しかし、それゆえに問題も多数含んでいる。本誌2007年7月9日号に掲載された「“Excelレガシー”再生計画」は、企業におけるExcel活用の問題点と今後の対策をまとめた特集記事として、分かりやすく興味深いものであった。今回は、現場で部分最適に作られたExcelの問題点から考え、次に内部統制や情報漏洩の課題について考えてみる。

Excelレガシーの3パターン

 Excelレガシーとは、業務部門がExcelを使って作成し、利用してきた業務システムを指す。主に、現場の非定型業務処理の中心となるシステムである。今、このシステムが3つの問題に直面している。「ブラックボックスのExcel」「部分最適なExcel」「後継者不足のExcel」である。

 「ブラックボックスのExcel」とは現場で各人が勝手に作成したマクロを含んだExcelシートが、異動や退職などによって作成者不在になっていることを意味する。作成者がいたとしても、改良の積み重ねとドキュメントの不備によって、誰がどこをどのように改良したか、分からなくなっている場合もある。

 「部分最適なExcel」とは、各部署がその場その場で、自分たちにとって最適と思われるシステムを作ってしまい、それが弊害となってきていることを指す。

 「後継者不足のExcel」は、企業の現場にいる現在20~30代の社員がExcelに特段の思い入れがなく、Excelの達人になろうと思わないことを問題視したものである。彼ら彼女らにとって、Excelは当たり前の“文具品”であり、本格的に使い込む対象ではない。

 これまでは、「Excelの達人」と言える人が企業の各部署に1人くらいおり、この人がマクロをゴリゴリと書き、Excelの業務利用を推進してきた。達人の多くは、40代前後でExcelに出会い、感動してすっかりのめり込んだ、という人である。現在50代前後の世代に多く、そろそろ後継者が必要な時期に入る。

 一連の問題から、「計算を間違っても原因が分からないシステム」「システムとして維持できないシステム」が散見され、これがExcelレガシー問題として浮かび上がってきている。

図1●Excelの三つの問題点
図1●Excelの三つの問題点
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スプレッドシート統制に対応

 ここまで見てきた問題点をより浮き彫りにしたのが、内部統制の対策から発生した「スプレッドシート統制」というテーマである。

 中身のロジックが精査できない、間違いの発生を検知できない、という現在のExcel利用は、財務報告や経営管理上、望ましいものではなく、使用を禁止すべきという意見すら出ている。また、情報漏洩の面からみても、企業の重要な情報が簡単にコピーされたり持ち出されることは、避けなければならない。こうした企業全体からみた情報活用やセキュリティの観点を考慮すると、Excelレガシーになってしまった業務システムに対処することは緊急課題と言えよう。