販売や生産業務などの膨大な基幹データを“見える化”し、社員一人ひとりが実務現場のビジネス活動に役立たせる。これが「ビジネスデータ分析」である。Excelとそのデータ分析機能によって、ビジネスデータ分析を現場で実践できる。

 情報システム部門の課題や悩みの1つは、システムに格納されている多量のデータをいかに現場で役立たせるかである。同じように、実務現場の悩みは、現場に多量にある実務データを毎日のビジネス活動にどう生かすかという点にある。

 両者の問題を解決しようとしたのがデータ・ウエアハウスの仕組みであった。しかし、この仕組みがなかなかうまく機能していない。これが多くの企業の実情ではないだろうか。その一番の要因や課題は、現場の方々が多量データの「調理」の仕方を知らないことにある。

 調理の仕方には2つの要素がある。調理そのものの「技術」と「レシピ(作り方)」である。データ分析に置き換えると、多量のデータをどのソフトを利用してどのように集計するのかという操作方法が「技術」に、どのような表やグラフを作成してその内容をどうビジネスに生かすかという点が「レシピ」に、それぞれ当たる。ビジネスにとって重要なのは当然後者だが、取り扱う操作ができなければ何も始まらない。

OLAPツール活用の誤算

 多くの企業は、データ・ウエアハウスを構築した際に、分析ソフトとしてOLAP(Online Analytical Processing)ツールを導入した。分析ツールがなければ、データ・ウエアハウスは単なるデータの倉庫でしかないからである。

 しかし、ここに落とし穴があった。OLAPツールを利用するのは現場の管理職である。こうした業務部門の部課長は、コンピュータ・リテラシがさほど高くない方が多い。そのため、初めて使うOLAPツールの操作の壁にぶつかり、ある程度の基本操作はできても、もう一歩突っ込んだ分析の仕方を習得できずじまいの方が多かったと筆者はみている。また、「何をどのように見て、どのように分析をすれば効果的か」というデータ分析の知識や手法もあまり普及していなかった。大量データの動向分析や要因分析の仕方、グラフの作り方や読み方をきちんと会社で教えられてこなかったことも要因である。つまり、調理の技術もレシピも不足していたのである。

 一方、業務部門を支援する情報システム部門は、OLAPツールの操作をある程度理解できても、現場でどのような分析がしたいのか、またそのためにはどのような手法を使えばよいのかがなかなかつかめなかった。こうして情報システム部門は結局、「自由に分析してください」と、倉庫であるデータ・ウエアハウスとOLAPツールを用意し、出来合いの分析メニューを大量に用意した。これはこれで役には立ったが、上記の基本的な問題が内在しており、利用頻度は上がらなかった。

要因分析がうまくできない

 基幹業務で作成する各種集計表の利用目的は、第1に何がいくつ売れたかという「事実の確認」と、予算の未達といった「問題点の発見」にある。出来合いの分析メニューは、この2つの目的を達成するためには十分役目を果たしている。

 しかし、結果としてだけ見る集計表の問題点は、「問題の要因は何か」「起因となる真因は何か」という要因分析をしにくい点にあった。要因がつかめてこそ、具体的な対策や戦略を立案し、実施できるのだが、要因分析を集計済みの表から行うことは難しい。本来、要因は大量の明細データをドリルダウンしていくことで明らかになるためである。

 出来合いの分析メニューでも、多角的な分析結果を素早く取り出せるのは事実だ。しかし、出来合いの表やグラフの一番の問題点は、その生い立ちやプロセスがつかめない点にある。結果として表やグラフが作成できても、利用する人が表やグラフの意味を理解できなければ情報として使いこなせない。つまり、利用する人が、データ分析の結果にいたるプロセスが理解でき、その「生い立ち」がつかめ、表やグラフの背景が説明できることが重要なのである。分析のプロセスに、分析する人の経験と知恵を加え、自由な観点で取り組む。このことがデータ分析の最大ポイントになる(図1)。

図1●基幹データの分析時に直面する課題と対策
図1●基幹データの分析時に直面する課題と対策
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