富士通が全額出資で設立した「富士通アドバンストクオリティ」は、プロジェクトに参加するプログラマ全員がルールに沿ってテストを消化したかを第三者の視点で確かめる役割を担う。例えば単体テストに「実施漏れはないか」や「障害はすべて修正済みか」をチェックする。口頭で「漏れはありません」と申告を受けるのでなく、テスト仕様書やテスト結果、テスト成績書などを提出してもらい、きちんとテストしたかを調べる()。

図●新会社「富士通アドバンストクオリティ」による「第三者品質検証」の対象工程と作業例
図●新会社「富士通アドバンストクオリティ」による「第三者品質検証」の対象工程と作業例

 新会社のベテラン技術者がプログラマ一人ひとりと個別に時間を設け議論する。詳細設計とプログラミングの工程で実施する。要件定義や基本設計、総合テストなど、顧客と共同で進める工程は対象から外し、ベンダーが責任を負う「ものづくり」に絞る。「富士通グループでは初の取り組み」(新会社の油井克実社長)と言う。

 従来の品質管理手法に限界を感じたことが取り組みの端緒となった。これまでもプロジェクトチーム内の品質担当者によるレビュー強化や、専門部署によるテスト結果の精査を通じて、組織的に品質を強化してきた。

 それでも現実にシステム障害は起こる。一昨年から大規模システムの作業品質やトラブル対応状況などを全社的に精査した結果、技術者個人の作業にまで踏み込んだ新たな施策が必要と判断した。

 昨年に4件のプロジェクトで第三者品質検証を試行したところ、不具合が減る、若手に品質強化の考えが浸透するなどの成果があった。そこで昨年末に本格展開を決めた。

 特に詳細設計から単体テストまでの局面では技術者を増員するケースが多く、プロジェクト内のルールが乱れやすい。実際に途中からプロジェクトに参加したプログラマがルールを把握せずにテストを進めるケースが見受けられた。本来ならプロジェクトマネジャが管理すべきだが、詳細設計から単体テストまでの局面は仕様変更やテスト準備などに追われて目が届かないことがある。そこをフォローするのが、新会社の役割だ。

 本体とは別の会社にしたのは、ベテラン社員の処遇を能力に応じて柔軟に決めるため。50歳以上の技術者は新会社に転籍する。「成果によっては本体よりも厚遇」(油井社長)。ベテランの奮起を促す。

 富士通が年間に受注する1億円以上のプロジェクトは700~1000件。今年度は、そのうち30件に新会社は関与する見通し。3年後には検証担当者を発足時の25人から150人まで増やし、年間300件以上をカバーする計画だ。