急なお話ですが,「ITの専門知識を素人に教える技」という刺激的なタイトルの本を出します。私のこれまでの「読解・図解・説明」などの経験を集大成してつぎ込んだ一冊であり,当連載の内容ともかなりの共通点がありますので,ぜひご一読ください(2008年7月14日発売予定)。
例えば,当連載では第3回に「階層構造」について,第5回で「情報に順番をつける」ことについて書きました。
実は,この2回分のテーマは,「構造化の3本柱」として非常に大事な3つの視点のうちの2つ,「階層性」と「直線性」にそれぞれ該当するものであり,7月に刊行する「ITの専門知識を素人に教える技」でも,17原則あるうちの最初の3つで取り上げているものです。
となると,「非常に大事な3つの視点」の残る1つは何なのかが気になりますね。そこで,今回はその残る1つを扱うことにしました。それがつまり
「対称的な関係」をしつこいぐらいに探してみよう
というタイトルの狙いです。直線性,対称性,そして階層性。この3つが,複雑な情報をわかりやすく整理するための「構造化の3本柱」なのです。今回はそのうち「対称性」について考えます。
■「対称性」とはどんな関係か?
まずは単純な事例で「対称性」を考えてみましょう。
東 対 西
右手 対 左手
このへんは誰にでも対称性がわかりますね。では次です。
許可 対 禁止
中心 対 周辺
これも比較的対称性がわかりやすいところです。東西や右手左手のように,物理的に折り返せば重なるほどの明快な対称性ではありませんが,意味を考えれば「うん,これは対称的だな」と理解するのは難しくないはずです。
大事なのは,複数の概念の間にこのような「対称性」が存在するのであれば,
その対称性をとことん追求し,
明確に表現してやらなければならない
ということです。
では,試しに次の2つの概念の間にどんな対称性があるかを考えてみてください。
<フィッシング詐欺> 金融機関等の正規のサイトを装った偽のサイトにユーザーを誘い込み,口座番号,パスワード等の重要な個人情報をユーザー自身に入力させて盗み出す手口。偽サイトへユーザーを誘い込むためにスパムメールがよく使われる。 <スパムメール> ユーザーが望んでいないのに送りつけてくる,広告宣伝等の内容のメールのこと。中でも,機械的に無差別に大量配信する確信犯的なスパムメールが大きな問題になる。ユーザーが受信したメールを振り分ける手間だけでも馬鹿にならない。 |
フィッシング詐欺とスパムメールの間の対称性,なんて聞かれても戸惑うだけかもしれません。例えば,「フィッシング詐欺のためにスパムメールがよく使われる」という記述などを手がかりにすると,「対称性じゃなくて類似性じゃないのか?」という考え方もありそうです。それでも,「対称性」をとことん探してみてください。執念深く探すことが肝心です。