これまでコンシューマ向けの色合いが強かった「iPhone」が、企業向けスマートフォンに変貌する。アップルは6月にも、iPhoneに企業利用に適した諸機能を追加する()。スティーブ・ジョブズCEO(最高経営責任者)は「今後は企業向けにも力を入れる」と明言。他のITベンダーと協力して法人市場を開拓する意向を示す。

図1●米アップルはiPhone の企業対応を強化する
図1●米アップルはiPhone の企業対応を強化する
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 iPhoneの国内販売に関しては、各通信事業者が水面下で激しい争奪戦を繰り広げている。現行機種は国内の通信方式に対応しないが、米ガートナーのケン・デュレイニー最上級アナリストは「今夏に(日本で利用可能な)第3世代携帯電話に対応した新機種が発表される」と予想する。早ければ来年早々にも国内販売が始まるとの観測もある。

 国内でもスマートフォンを導入する企業が増えているが、その大半はマイクロソフトの「Windows Mobile」を搭載する端末。企業向けの機能強化を施したiPhoneは、その有力な対抗馬になり得る(スマートフォンの動向は本号の104ページを参照)。

 企業向けの機能強化は、ファームウエア(制御ソフト)のバージョンアップで実現する。マイクロソフトのグループウエア「Exchange Server」との連携を可能にする。インターネットまたは携帯電話網経由でメールやアドレス帳、スケジュールを同期できるようになる。社員が仕事に使うメール・アドレスに届いたメールをプッシュ型でiPhoneに配信可能だ。

 セキュリティ機能と管理機能も強化する。遠隔地からiPhone内のデータを消去したり、パスワード利用を強制したりする機能が加わる。米シスコのVPN(仮想私設網)ソフトを使った社内システムとの暗号通信機能も提供する。複数台のiPhoneをまとめて設定する管理ソフトを用意する。

 このほかiPhoneで動くソフトの開発に必要な「SDK(ソフトウエア開発キット)」も外部に初公開する。他のソフト会社やユーザー企業がiPhone向けソフトを自由に開発できるようになる。すでにSaaS最大手の米セールスフォース・ドットコムが開発意向を表明している。これまでiPhoneではアップルが提供する純正ソフトしか動かせなかった。

 ただしiPhoneにサードパーティ製ソフトを導入するには、アップルが用意する専用ダウンロード・サーバーを経由する必要がある。このサーバーは無償で利用できるが、作成したソフトを登録するには月額299ドル(ユーザー企業の場合)かかる。

アップルはすでに新しいファームウエアとSDKのベータ版を配布中。正式版は6月9日(米国時間)に開催する開発者向けイベント「WWDC」で発表する見通しだ。