NTTドコモは6月中にFOMA/無線LANデュアル端末の新機種「N906iL onephone」を発売する。従来機に比べると,GSM対応,IEEE 802.11a搭載などの機能が強化されている。ドコモはN906iLを法人だけでなく個人にも販売する方針。法人と個人の両面からデュアル端末の市場拡大を狙う。

 N906iL onephone(NEC製)は,1台で内線端末としても携帯電話としても利用できるFOMA/無線LANデュアル端末。NTTドコモが2008年6月中にも発売する。

 iLシリーズの新端末は,2007年2月発売の「N902iL」から約1年半ぶり。N902iLと比べると,HSDPA(3.6Mビット/秒),GSM対応,IEEE 802.11aなどの機能が追加されている。バッテリーの持ち時間もさらに改善された(図1)。このほか,従来機と同様にNTTドコモが提供する内線電話と携帯電話の融合サービス「PASSAGE DUPLE」や「ビジネスmoperaIPセントレックス」にも対応する。

図1●FOMA/無線LANデュアル端末を個人ユーザー向けにも販売
図1●FOMA/無線LANデュアル端末を個人ユーザー向けにも販売
NTTドコモの夏モデル「N906iL onephone」は,これまで企業ユーザー限定で販売してきたデュアル端末を,個人ユーザー向けにも販売。ホームエリア向けサービスに対応した端末として売り出す。企業向けにも引き続き販売する。従来機であるN902iLからはHSDPA/GSM対応,IEEE 802.11a搭載,バッテリーの持ち時間などが強化されている。
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 GSM対応により,ユーザーは海外出張時でもそのまま端末を持って行ける。IEEE 802.11aのサポートでは,802.11b/gの電波干渉が激しい場所では802.11aで通信するなど,柔軟な利用が可能になる。これらの機能が追加されたことで,N906iLは企業ユーザーにとってより使いやすい端末に仕上がっている。

企業向け限定から方針転換

 ただN906iLについて,ドコモは販売方針を変えた。企業ユーザー限定モデルと位置付けていた従来機とは違い,個人ユーザー向けにも販売する。

 ドコモはこの春から,ホームエリア向けサービスの強化を進めている。その一環として6月から,家庭内に無線LANルーターを設置し,ブロードバンド回線経由での高速パケット通信や050番号によるIP電話の利用を可能にする「ホームU」というサービスを開始する。N906iLはこのホームUに対応する唯一の端末である。価格はオープンだが,他の906iシリーズと同程度の5万5000円前後になる見込み。ブロードバンド回線は,マルチセッションに対応したサービスが必要で,事実上,NTT東西のフレッツ・サービスに限られる。

 ドコモが販売方針を変えたのは,「個人ユーザーによる,動画などの大容量コンテンツ利用のニーズが高まっていたため」(NTTドコモ)。無線LANを搭載したデュアル端末を提供することで,コンテンツを高速にダウンロードしたいとのニーズに応える。

 一方でドコモには,個人への浸透を通して,デュアル端末の認知度を高められるとの期待もある。デュアル端末市場は堅調に伸びつつあるものの,「まだ爆発的なブレイクには至っていない」(NECの石原伸一UNIVERGEソリューション推進本部UNIVERGEサポートセンターグループマネージャー)。ライバルとなる構内PHSが,現在でも年間10万台以上出荷されているのに対し,デュアル端末の市場はまだ小さい。そこで,個人ユーザーを対象にすることで,市場の活性化を狙う。

 さらに,個人市場を意識すると端末は今までよりも速いテンポで改良が進むかもしれない。そうなれば,個人向けの販売は企業ユーザーにとってプラスに働くことになる。