米グーグルが5月末に開催した開発者会議では,開発基盤「Google App Engine」の一般公開など,同社のWebプラットフォームをオープン化する姿勢を強調した。インターネットの利用者を増やし,収益の拡大を図るのが狙いだ。携帯機器向けソフトウエア基盤「Android」も,オープン化による収益拡大の一手段と位置づける。

 「お父さんは検索の会社に入るの?」「いや,Webサービスを開発する会社に入るんだ」--。グーグルの開発者会議「Google I/O」の冒頭,同社のヴィック・ガンドトラ副社長(写真1)は,1年ほど前に米マイクロソフトから移籍したときの家族とのやりとりを紹介した。これは,「Webインフラ企業」を目指す,現在のグーグルの狙いを象徴するエピソードだ。

写真1●開発者会議の基調講演に立つ米グーグルのヴィック・ガンドトラ副社長
写真1●開発者会議の基調講演に立つ米グーグルのヴィック・ガンドトラ副社長

 検索サービスだけでなくWebインフラ企業へ。その実現に向けた具体的な活動の例が,各種API(application programming interface)の公開である。この数カ月だけをみても,グーグルは矢継ぎ早に各種APIを公開している(表1)。サード・パーティがこれらAPIを活用することで,グーグルが保有する地図情報(Google Map)や動画サービス(YouTube)などを自由に取り込み,情報量が豊富で魅力あるサービスを簡単に提供できるようになる。

表1●4月に限定的に提供していたGoogle App Engineを一般に公開
このほか数多くのAPIを公開,サード・パーティが同社のサービスを利用するよう促している。
発表日 内容
3月14日 コンタクト情報を閲覧,更新するための「Google Contacts Data API」を公開
3月19日 構造化データへのアクセスを可能にする「Google Visualization API」を発表
3月20日 翻訳および言語識別用のAPI「AJAX Language API」を導入
図表を簡単に作成できる「Google Chart API」の機能を強化
3月21日 動画共有(YouTube)サービスを呼び出すための「YouTube Data API」をアップデート
3月25日 米マイスペースや米ヤフーと共に「OpenSocial Foundation」を設立
3月26日 写真共有サービス(Picasa)に顧客別のボタンを追加できる「Picasa Button API」を導入
4月7日 グーグルの情報インフラを利用可能にする「Google App Engine」を限定公開
4月21日 顧客ごとにトップページをカスタマイズする「iGoogle」向けのサンドボックスを公開
5月12日 Webページにソーシャル機能を付与する「Google Friend Connect」を発表
5月14日 オープンな参照ライブラリ「Google Doctype」導入
Flashアプリケーションへの地図情報(Google Maps)挿入を可能にする「Google Maps API for Flash」導入
5月27日 Google App Engineを一般公開
5月30日 健康情報を扱う「Google Health API」導入