NTTドコモは携帯電話の開発プラットフォームを大幅に見直し,2009年後半以降に出荷する端末はこの環境で開発する。通話などすべての端末が搭載すべき共通機能と,iモードなどNTTドコモ独自の機能を分離。端末開発の効率化,NTTドコモ端末市場への海外メーカーの参入,日本メーカーの海外進出を促進する。

 NTTドコモはこれまで,すべての携帯電話が実装する機能とドコモのサービスに必要な機能をパッケージにしたミドルウエア「MOAP」(mobile oriented applications platform)を用意してきた。メーカーは開発環境にMOAPを組み込み,自社独自機能を付け加えて,端末を作っていた(図1)。

図1●従来と新しい開発プラットフォームの違い
図1●従来と新しい開発プラットフォームの違い
ソフトウエア・ベンダーから携帯電話に必要な機能を共通プラットフォーム(共通アプリと共通ミドルウエア)として調達することで,携帯電話事業者とメーカーはそれぞれ独自部分の開発に注力できる。
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MOAPを共通/個別部分に分離

 新プラットフォームでは,すべての端末に共通する機能と,ドコモ固有のサービスに必要な機能を備えた「オペレータ・パック」に分離。さらにメーカー個別の機能を追加すると,端末に仕立てられる構造にする。共通部分には電話や電子メールなどが,ドコモ固有の部分にはiモードやiチャネルが,メーカー独自部分にはワンセグ放送をクリアに表示するソフトなどが入る。

 ドコモが新しい構造を採用した狙いはいくつかある。第1に端末開発コストを抑えられる。ドコモは自社のサービス部分だけを開発し,共通部分のソフトは外部ベンダーから調達する。

 第2に海外から安い端末を調達する道が開ける。海外ベンダーが日本に参入する際に,ドコモ端末専用の開発環境を用意しなければならなかった。新しい構造なら,グローバルで展開している端末にオペレータ・パックを搭載することでドコモ対応機を作れる。

 第3に日本メーカーの海外進出を後押しできる。海外勢とは逆にメーカーがその地域向けのオペレータ・パックを組み込むことで現地仕様の端末を提供できる。仏オレンジは同様の開発プラットフォームを採用すると表明した。

 第4としてサード・パーティ・ソフトウエアの活性化につながる。サード・パーティは共通部分のミドルウエアを前提にソフトを開発し,これを世界中のメーカーに販売できる。通信事業者やメーカーは安いコストで魅力的な端末を作れるようになる可能性がある。

まずLinuxから,Symbianも検討

 Linux系の共通部分とオペレータ・パックはドコモがACCESSと,「ALP」(ACCESS Linux Platform)を使って開発する。ただし,ALP以外のプラットフォームも視野に入れる。NTTドコモ移動機開発部長の三木俊雄常務理事は「現在のLiMo(Linux OSによる携帯電話向けプラットフォーム)は機能が不足しているが,充実すれば他社のプラットフォームに,オペレータ・パックを組み込んで端末を作れる」と言う。

 Symbian OS系のプラットフォームも,「いつスタートできるかはまだ分からない」(同)が同様の構造に転換することを検討している。