先週今週と,主要Webブラウザの新バージョンが相次いで登場した。米Mozillaは6月18日未明(現地時間の6月17日)に,オープンソース・ブラウザの新版「Firefox 3」正式版の配布を開始。Firefox 2が登場したのが2006年10月なので,約1年8カ月ぶりのメジャー・バージョンアップとなる。

写真1●6月19日(木)の夜の段階でFirefox 3のダウンロード数は1000万を突破
写真1●6月19日(木)の夜の段階でFirefox 3のダウンロード数は1000万を突破
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 配布開始日はダウンロード数の世界記録に挑戦するイベントが行われた。イベント終了時で約830万(Mozillaの発表による)をスコア(写真1)。世界各国・地域の中で日本は,米国,ドイツに次ぐ約40万(同)を記録した。

 同社では500万を超えるあたりと予想していたようで,それを大幅に上回った形になり「リリース直後から予想を上回る多くの方にダウンロードしてもらい,スタッフ一同感動している」(Mozilla Japanの瀧田佐登子代表理事)といったコメントを出している。日本では,Firefox 3のダウンロード状況を可視化するプロジェクト「Firefox 3 の灯」も実施された。

■参考記事:「Firefox 3は1日800万件以上のダウンロードで世界記録達成」
■参考記事:「Firefox 3 の灯」公開,ダウンロード状況を日本地図上に光と数字で可視化
■参考記事:Mozillaが最新版Webブラウザ「Firefox 3」を公開,ダウンロード件数は順調に増加

 それに先立つ6月12日には,ノルウェーのOpera Softwareがデスクトップ用の最新バージョン「Opera 9.5」の正式版のダウンロード配布を始めている。現地時間の17日には,全世界でダウンロード件数が470万に達したとアナウンスした。ほかにも米アップルが3月にWindowsの「Safari 3.1」正式版を公開,米Microsoftの「Internet Explorer 8」もBeta 1が出ており,新版の競争が激化している。

■参考記事:「Opera 9.5」が正式リリース、ブックマークの同期など新機能搭載
■参考記事:Windows版Safariが「正式版」に,メニュー表示も日本語化
■参考記事:Microsoftが「Internet Explorer 8」のベータ版を一般公開

パフォーマンス向上を各社が異口同音にアピール

 Mozilla Japanによると,Firefox 3は日本発の技術を搭載するとともに,バージョン2から1万5000件以上の修正が加えられたという。Firefox 3に施された修正・機能追加は,セキュリティやオフライン対応など多岐にわたる。オフライン対応などは,今後,Webの使い方を変えていくと見られる注目機能ではあるが,本格的に使われ出すまでにはもう少し時間がかかりそうだ。まず使ってみてという時点では,Webの使い方が一変したというよりは「検索しやすくなった」「Webを使っているときの様々な待ち時間が短くなった」といった感じで,使い勝手がぐっと高まったとの感が強い。

■参考記事:「Firefox 2から修正1万5000件超,日本発の技術を搭載」,MozillaがFirefox 3の説明会
■参考記事:「Opera 9.5のここに注目」,公開中の正式版について日本のオフィスに聞いた

写真2●Firefox 3の新機能「スマートロケーションバー」
写真2●Firefox 3の新機能「スマートロケーションバー」
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 例えば,Firefox 3の「スマートロケーションバー」やOpera 9.5の「クイックファインド」は,似た位置付けにある新機能(写真2)。いずれも目的のWebサイトをさらに検索しやすくする仕組みだ。アドレスバー(ロケーションバー)にキーワードを入力すると,アクセス履歴などから過去に見たWebページのURLを簡単に見つけられる。

 こうしたなか,注目どころは米Appleを含めた各社が,異口同音にパフォーマンスの向上をアピールしていることだ。スピード競争が始まっているというわけである。パフォーマンス向上によってユーザーが受けられる恩恵は,将来はますます大きくなる。Ajaxの使用など,Webアプリケーションは今後ますます複雑化・高度化していくからだ。

最新ブラウザはやっぱり速い

 では,最新バージョンのブラウザがどれだけ高速化しているのか。そこで,Firefox 3,Opera 9.5,Safari 3.1,Internet Explorer 8 Beta 1の,JavaScriptのパフォーマンスを測定してみた。

 測定には,The WebKit Open Source Projectが提供しているJavaScriptのベンチマーク・サイト「SunSpider」を利用した。WebKitはオープンソースのブラウザ・エンジンで,Safariが採用しているもの。米Googleの携帯プラットフォーム「Android」のブラウザもWebKitがベースだ。

■参考記事:動画で見る「タッチパネル搭載Android」
■参考記事:iPhoneとAndroidがケータイ業界にもたらすインパクト

 結果は図1の通り。数値が小さいほど高速である。最速はFirefox 3で,Safari 3.1,Opera 9.5が続く。ここまではあまり差がないが,Internet Explorer 8 Beta 1はやや水をあけられている。測定可能なものに関しては,前のバージョン/現行バージョンも測ってみた(Opera9.27は一部項目を測定できなかったので除外)。Internet Explorer 7と8 Beta 1,Firefox 2と3,ともに約3.5倍速度が向上している。

 パソコンのスペックやサイトの構成,ブラウザの挙動などにより差があるだろうが,Firefox 3,Opera 9.5,Safari3.1は,ともにきびきびと動く印象を受けた。測定値ほどの差はないものの,WebページによってはInternet Explorer 7との違いを感じることができる。今使っているブラウザのスピードにストレスを感じる人は,いちど各社の新バージョンを使ってみてはいかがだろうか。

図1●Webブラウザ最新版のJavaScript処理速度
図1●Webブラウザ最新版のJavaScript処理速度
測定に使ったパソコンは松下電器産業の「レッツノートR4(CF-R4)」。メモリーは512Mバイトで,OSはWindows XP Professional SP2である。