今回の調査結果で,最も多くのITエンジニアが利用していると回答したのは,オープンソースの統合開発環境(IDE)「Eclipse」と,マイクロソフトの「Microsoft Visual Studioシリーズ」の二つ。それぞれ172人,327人の回答を集めた。

 これら二つのツールの総合満足度は,Eclipseが80.4点,Visual Studioは71.1点と,Eclipseに軍配が上がった。11種類の評価項目のうち,プログラミング分野で重要度が高かった上位3項目に注目してみると,Eclipseの満足度が「作業の効率向上に役立つ」「操作がしやすい」でVisual Studioを上回った(図1)。中でも,「作業の効率向上に役立つ」は,Visual Studioの評価を13.7ポイント上回る83.0点を獲得するなど際立つ結果となった。

図1●EclipseとVisual Studioの評価項目別満足度
図1●EclipseとVisual Studioの評価項目別満足度

 これらの評価をさらに詳しく分析するために,二つのツールの「気に入ったところ」と「物足りないところ」について,回答者の自由回答の中から主なものを図2にまとめた。

図2●EclipsとVisual Studio利用者の気に入ったところと物足りないところ
図2●EclipsとVisual Studio利用者の気に入ったところと物足りないところ
[画像のクリックで拡大表示]

 Eclipseでまず目立つのは,プラグインや,他のツールとの連携機能の充実に関する評価だ。「必要な機能をプラグインで追加できる」「(変更/構成管理ツールの)CVSと標準で連携できるのはよい」といった評価が寄せられた。そのほか,「多くの開発者がしようしたことがあり,教育コストが非常に低い」という,社内展開のしやすさを評価した声もあった。

 逆に,Eclipseに対する不満点としては,高い評価を得たプラグイン機能や他のツールとの連携機能について,使い勝手に物足りなさを訴える声が複数寄せられた。

プロジェクト指定の多いVisual Studio

 一方Visual Studioでは,「直感的に操作でき,迷わず使える」「昔から使っているため扱いやすい」など,操作しやすさへの高評価が目立った。物足りない点としては,ソースの管理のしにくさや,ヘルプの分かりにくさなどが挙げられた。

 EclipseとVisual Studioの両方に共通する物足りない点として挙げられていたのが,メモリーの消費量の多さ。利用するマシンが高いスペックを必要になることへの不満が複数寄せられていた。

 EclipseとVisual Studioに関する調査結果の比較で興味深いのは,ユーザーがそのツールを選んだ理由に大きな違いが見られたことだ。無償のEclipseは,利用者全体の32.0%が選定理由に「価格」を挙げいたのに対し,Visual Studioの選定理由のトップは「使い慣れていた」で34.9%,これに「プロジェクトで指定されていた」が続く。プロジェクトで指定されていたという回答は,Eclipseに比べて,10ポイント以上高い。

 プロジェクトで指定されていたという結果は,ITエンジニア個人からすれば「自分が選んだわけでなく,指定されて使っているだけ」という意識につながりかねない。このことが,Visual StudioとEclipseの満足度の評価に影響しているのかもしれない。