秋山 進
ジュリアーニ・コンプライアンス・ジャパン
取締役・マネ―ジングディレクター

 最近は、TVや新聞に企業の不祥事が載らない日は無いといってもよいような状況が続いています。まず、どのような不祥事があるのかについて、02年からこの数年間に起こった主な企業不祥事を挙げてみました。大きなものだけでこんなにあるのですから、ビジネス社会のモラル低下は著しいといった意見が出てくるのも当然でしょう。「企業とはお金儲けのためなら平気で悪いことをする存在」と多くの人が思うのも仕方がないことだと思います。

2002年以降に起こった主な企業不祥事

 私はこれまで、内部そして外部からたくさんの会社を見てきました。コンプライアンスの仕事をしていることもあり、その中には、問題企業の烙印を押されたところも多くあります。ただ、経験上の感想ではありますが、そういった問題企業であっても、一部のデタラメなものを除いては、そのほとんどが、社会の役に立つモノやサービスを作り出そうと真面目に努力しているのです。ところが、何かが狂うと、一人ひとりの従業員は決して問題の起こすような人ではないのに、問題企業になってしまうのです。

 ではなぜ、その真面目な人たちが不祥事を起こしてしまうのでしょうか?その答えを考えるために、まずは企業不祥事のタイプを分類するところから始めてみたいと思います。

 私は、不祥事を起こす企業を以下の9つに分類しています。企業によっては、その複数に該当する場合もあります。この分類は、心情的にグレー度の高い順序に並べています。法廷において企業がどのように判断されるかは個々の法令によりますが、ここでは意図性や不可避性の観点で問題が大きいと思われる順序で置いてみました。


1 もともと、デタラメな企業
2 政治と癒着した企業
3 過去からのしがらみを断てなかった企業
4 グレーゾーンを攻めたつもりがクロになった企業
5 社会規範と現実のビジネスの在り方に乖離がある企業
6 品質管理、情報管理、お客様対応がずさんな企業
7 経営危機(資金難)に陥った企業
8 現場が功を焦って問題を起こした企業
9 従業員が個人的に犯罪を起こした企業

 一つずつ説明していきましょう。

1 もともと、デタラメな企業
 もともと、デタラメな企業 というのは、たとえばネズミ講ビジネスであり、ありえない利回りを保証する投資会社(例 豊田商事)であり、お年寄りをだます悪徳リフォーム業もここに入ります。これらは、問題行為であることを知りながら、法の目をかいくぐってビジネスを続けていく悪徳企業です。こういった企業は、いつの時代にも一定比率で発生し無くなりません。

 ただ、この数年で大きく変わったことがあります。それは、このカテゴリーの企業は、もともと胡散臭い企業として認識されており、問題が表面化するまで決して表舞台に出てくるような企業ではありませんでした。ところが最近では、上場企業の中にもこういった企業が存在してしまっているのです。

 たとえば、メディアリンクスという大証ヘラクレス上場のIT企業がありました。この会社は、売上の半分以上が循環取引による架空売り上げという信じられないことをやっていました。このようなデタラメな企業が新興市場の一つとはいえ存在していたこと、そして、その後も続々といろんな上場企業でありえないデタラメ行為が表面化していることなどは、過去には考えられなかったことです。

 ライブドアなども、買収したいくつかの企業はきちんとしたビジネスをしていましたが、自社の株を使って儲けた金融事業は、違法性の判定はさておき、このカテゴリーに入れて良いようなデタラメな事業でした。

 次回は、政治と癒着した企業が起こす不祥事について説明します。

注)当コラムの内容は、執筆者個人の見解であり、所属する団体等の意見を代表するものではありません。


秋山 進 (あきやま すすむ)
ジュリアーニ・コンプライアンス・ジャパン
取締役・マネ―ジングディレクター
リクルートにおいて、事業・商品開発、戦略策定などに従事したのち、エンターテイメント、人材関連のトップ企業においてCEO(最高経営責任者)補佐を、日米合弁企業の経営企画担当執行役員として経営戦略の立案と実施を行う。その後、独立コンサルタントとして、企業理念・企業行動指針・個人行動規範などの作成やコンプライアンス教育に従事。産業再生機構の元で再建中であったカネボウ化粧品のCCO(チーフ・コンプライアンス・オフィサー)代行として、コンプライアンス&リスク管理の体制構築・運用を手がける。著書に「社長!それは「法律」問題です」「これって違法ですか?」(ともに中島茂弁護士との共著:日本経済新聞社)など多数。京都大学経済学部卒業