NTTぷららは,NTT東西地域会社のFTTH(ファイバー・ツー・ザ・ホーム)回線向けのIPTVサービス「ひかりTV」を2008年3月31日に開始した。NGN(次世代ネットワーク)向けのサービスでは,IPv6による仮想閉域網を用いた安定した映像配信環境で,多チャンネル放送やVOD(ビデオオンデマンド)に加え,地上デジタル放送のIP再送信を行っている。

地上デジタル放送のIP再送信は順次提供エリアを拡大

 NGN向けのサービス展開に注目が集まる中で,「3月10日から受け付けを始めた事前予約には予想を上回る申し込みがあり,STB(セットトップボックス)が入庫待ちの状況となってしまい,お客様にご迷惑をお掛けしてしまった」(NTTぷららの伊藤康之映像ビジネス本部映像サービス企画部長)という。同社では,NTTグループが2010年度中の達成目標として掲げているFTTH回線の契約数2000万のうち,約5%に相当する約110万ユーザーの獲得を目指している(図1)。

図1●「ひかりTV」の加入者予測
図1●「ひかりTV」の加入者予測
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 ひかりTVは,NTTコミュニケーションズグループがそれぞれ運営してきた「OCNシアター」,「オンデマンドTV」,「4th MEDIA」の3サービスを集約した上で,新たな事業として出発した。これら現行サービスを契約する既存ユーザーに対してはひかりTVへの移行を促し,7月末までに現行サービスを終了する予定だ(図2)。

図2●既存3サービスのひかりTVへの統合スケジュール
図2●既存3サービスのひかりTVへの統合スケジュール

 NGNを利用する地上デジタル放送のIP再送信は,東京エリアが5月9日から,大阪エリアは5月23日からサービスを開始した。NTT東西によるNGNの提供エリア展開を踏まえながら,各地域の放送事業者から再送信の同意を得た上で順次サービスエリアを拡大する方針だ。

 ひかりTVのプラットフォームは,国内の業界団体で構成する「IPTVフォーラム」が策定した共通技術仕様に準拠していく。伊藤氏は,「標準化を視野に入れて他の事業者との連携を図りやすい状況をつくることが,コンテンツ流通の幅を広げ,国内の有料多チャンネル市場を拡大させる」との見解を示し,IPTVの標準化が普及促進のカギを握ることを強調した。

IPTVやVOD向けの番組制作にも積極的に取り組む

 ひかりTVのVODサービス向けのコンテンツとして1万以上のタイトルを用意した。このうち約5000タイトルは定額料金を支払えば見放題で楽しめる。さらに,OCNシアターや4th MEDIAで提供していたカラオケコンテンツは7月をメドにひかりTVでも提供を開始し,常時約1万3000曲以上を提供する予定である。

写真●セミナーで講演するNTTぷららの伊藤氏
写真●セミナーで講演するNTTぷららの伊藤氏

 また同社は,ひかりTV向けに番組の自主制作や共同制作も積極的に行っていく考えだ。第一弾として,東名阪地域の独立UHF局で構成する共同制作機構「東・名・阪 ネット6」と共同でヒューマンドラマ「ネコナデ」を制作した。各地域放送局で放映した後にひかりTVでVOD配信し,地上波放送の受信エリア外の地域でもひかりTV経由で番組を視聴できるようになった。

 今後の展開については,IP放送事業者のチャンネルVODサービスや,データ付き放送,双方向サービスといった放送と通信を連携させる取り組みを行う一方,「YouTubeなどオープンなインターネット環境の中から,一般ユーザーが制作した優良コンテンツを発掘し,それを売買できるような仕組みづくりを進めたい」(伊藤氏)と,今後の広がりの可能性について語った。