家電メーカーが中心となって,放送と通信を連携した新たなテレビの形を具現化させたテレビ向けポータルサイト「アクトビラ」。テレビ本体に機能を内蔵しているため,別途STB(セットトップボックス)を用意する必要がない。通信回線をテレビ本体に接続するだけで利用でき,使い馴れたテレビのリモコンで簡単に操作できる。入会手続きや基本料金を必要としない手軽さも特徴だ。

セミナーで今後の経営戦略をアピールするアクトビラの久松龍一郎副社長
セミナーで今後の経営戦略をアピールするアクトビラの久松龍一郎副社長

 アクトビラの久松龍一郎副社長が,日経ニューメディアと日経エレクトロニクスの共催セミナーで公表したデータによれば,アクトビラユーザーの平均年齢は42歳。最高齢は89歳にまで及び,40歳代以上のユーザー層にも幅広く利用されている。久松氏は,「携帯電話機やパソコンのネットメディアではリーチできなかったユーザー層が,アクトビラには多く存在する」とし,従来にはないネットメディアとしての可能性を示唆した。

 アクトビラ対応機種を開発および発売するメーカーは,現状で松下電器産業,ソニー,シャープ,東芝,日立製作所,日本ビクター,ナナオ,船井電機の8社にのぼる。対応機種が増える背景には,「MPEG-2といったARIB準拠のエンコード技術を採用しているため,大きな追加コストを発生させずに現行の地上デジタル放送用テレビに搭載できる」という利点がある。

アクトビラビデオ・フルの対応機種を増加へ

 ただし,HDTV(ハイビジョン)相当の画質で全画面表示できる映像コンテンツ「アクトビラビデオ・フル」に対応するには,H.264方式に対応するデコーダーの追加搭載を必要とする。同社では,まだ一部の上位機種に限定されているアクトビラビデオ・フル対応機能を今後は基本仕様にして,さらに対応機種を増やしていく方針だ。

 2011年の地上アナログ放送の終了に伴うテレビの買い替え需要を見込み,アクトビラでは「2011年までのデジタルテレビ普及台数目標1億台のうち,7割以上をアクトビラ対応にする」(久松副社長)ことを目標として掲げている(図1)。現時点においては,「対応テレビは約400万台出荷済み。このうちアクトビラに接続した台数は40万台を超える」(久松副社長)という状況だ。

図1●アクトビラ対応機器の普及台数の見通し
図1●アクトビラ対応機器の普及台数の見通し

 2007年2月からまず静止画とテキストによる生活関連情報サービスの提供を始め,9月にはVOD(ビデオ・オン・デマンド)型での映像配信サービスを開始した。さらに,2008年度中に蓄積型のダウンロードサービスの開始を予定する。「アクトビラへの接続率はこれまで10%程度に過ぎなかったが,映像配信サービスの開始以降,接続率が30~40%に向上。手応えを感じている」(久松氏)という。

 2008年3月には,カルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)のグループ会社であるTSUTAYA BBがアクトビラ上に「TSUTAYA TV」を開設している。今後米ハリウッドのメジャースタジオの映画も含めた約100タイトルもの有料コンテンツを配信する。またNHKも2008年12月から,過去に放送した番組を配信する「NHKオンデマンド」サービスの開始を予定している。このようにアクトビラは今後,映画やテレビ番組など映像コンテンツの拡充を進めていく(図2)。

図2●競合サービスに対するアクトビラの優位性
図2●競合サービスに対するアクトビラの優位性